実体験「何でもなかった話」
「京成線沿線での怪」という怪談がある
詳細は省くので知らない方には調べて欲しい
簡単に説明すると、ベンチで休んでいたら突然現れたヘドロの怪物に自転車を腐食されたという話だ
この怪談の舞台が地元に近かったこともあり、大学生になった俺は友人と二人で深夜の肝試しに向かった
とは言っても昼間に何度か通ったことのある場所なのであまり怖くない
話の内容から当たりを付けてベンチに座った
周囲を窺いながら雑談をしていたが、深い時間にも関わらずランニングをしている人がおり拍子抜けだ
何も起こらないまま数時間が経過した
話は尽きないが何も起こらないので帰路につく
干潟の外周を抜けて道路に出ると同時に足が止まった
道路を挟んだ向かいにある歩道、そこにある電柱の下にそれはいた
真っ白いワンピース姿の女性が俯いた状態でこちらに背を向けて立っていた
俺も友人を止めて微動だに出来なかった
固まった体とは裏腹に目と頭は止めどなく動く
典型的だな
これ本物か?
襲われたらどうする?
殴ってみるか?
友人は守らないと
などと考えながら、否定する材料を求めて細部まで観察する
5秒ほど動けずにそうしているとワンピースの女が少し動いた
手に持った携帯電話を耳に当てている
ただ電話していただけの生きた人間の女性だった
それが分かると安心し、この事を笑いながら家に帰った