掌編怪談「消しゴム」
左手の薬指の付け根が痒い
手に持ってた消しゴムで擦るとポロっと薬指が取れた
泣きながらお母さんに報告するも反応がおかしい
僕には生まれつき左手の薬指はないと言う
そんなはずないと喚いていると、アルバムを取り出した
そこに写る僕には、確かに左手の薬指がない
取れた指が机に残っているのを思い出して取りに戻る
しかし机に指はなく、見覚えのない木の枝が置いてある
僕は消しゴムを握りしめて、お母さんの所に戻る
こうやって擦ったら消えたんだ
そう言いながら左手首を消しゴムで擦って見せる
ゴトッという音と共に左手の手首から先が床に落ちた
あんた何してるの
そんな石を床に落として傷が付いたらどうするの
お母さんが怒鳴る
足元には拳大の石が落ちている
僕の左手の手首から先がやはり無くなっている
お母さんを無視してアルバムを開く
僕の左手は写っていなかった
僕は怖くなってお母さんに消しゴムを投げつけた
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