掌編怪談「くちゃくちゃ」

先輩と二人で測量の為に山に入った

先輩は僕の後ろを歩いており、ガムをくちゃくちゃ噛んでいる

いつもの事だが不快な音だ

そう思いながら時々雑談を挟みつつ山を登る

そろそろ着きますよ

先輩に声をかけるが返事がない

相変わらずくちゃくちゃと咀嚼音だけが聞こえてくる

溜め息が出そうになるのを飲み込んで振り返る

デカイ顔から手足が生えた毛むくじゃらの化け物が振り返った僕の眼前でくちゃくちゃ何かを咀嚼していた

ソレが大きく息を吸った直後、風船ガムの様にソレの口から苦悶の表情を浮かべた先輩の顔が膨らんで出てきた

膨らんだ先輩と目が合った

ダァ…ズゥケァ

先輩は何か言葉を発していた

だが、言い終わらない内に空気を入れすぎた風船ガムの様にパァンと大きな音を立てて弾けた

周囲には肉片が飛び散り、化け物はいなくなっていた

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