掌編怪談「誰だ」

小学六年の三学期、卒業前に最後の席替えをした

女子が席を決めている間、男子は廊下で待機する

男女が入れ替わり、全員の席が決まると皆で一斉に席を動かした

前後は親友の二人なので正直隣の女子は誰でもいい

移動してきた女子をみると知らない女の子だった

女の子は固まっている僕に挨拶をする

六年間通った学校だ、同学年ならほとんどの子と面識がある

何よりクラス去年から引き続き同じメンバーだ

知らない子がいるわけない

親友二人に隣の子が誰か聞く

いじめか?卒業前だし冗談でもそう言うのやめようぜ

そう言われたので、訳も分からず謝った

それから二ヶ月間、一人増えたのを誰も気にすることなく学校生活を送り

そのまま卒業式を迎えた

式が終わり教室に戻ると、先生から皆へ言葉が送られる

一人一人教卓前に呼ばれ、それぞれに言葉と共に記念品とメッセージカードを渡す

36人全員に配り終え、締めに入ろうと言う時だった

先生、私まだ呼ばれてません

隣の席の女の子が手を上げた

あぁすまん、それじゃあ前に来てくれ

先生が珍しく慌てている

女の子が教卓の前に立つ

そして先生から一言

お前…誰だ
 
教室がざわつく

周りに気を取られた一瞬のうちに、女の子はいなくなっていた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?