掌編怪談「夢を聞く」

ときどき変わった夢を見る

それは音だけの夢

何も見えない暗闇の中、音だけが聞こえる

夢の中では自分と言う存在すらも認識できない

ただただ聞こえる音に想いを馳せる

そんな夢

夢を見始めた頃は風や雨、波などの自然音だけが聞こえていた

そのうちに鳥や虫など、生き物の鳴き声が聞こえ始め

しばらくして人の話し声や生活音が聞こえるようになり

そしていつからか、都会の喧騒と呼べるような雑音へと変わっていった

それから何年もの間、聞こえる音に変化はなかった

しかし、それは突然やってきた

何かを警告するようにサイレンが鳴り響き、しばらくして爆発音が聞こえた

それから数年間、夢から聞こえてくるのは風や雨といった自然音のみ

ある日ギィーっと言う甲高い音がし、その後ザッザッザッと言う足音のような音がした

誰だ…お前はここで何をしている…

そう声がした

なんとなく自分に声をかけていると感じた

そうかお前は…

ここで目が覚めた

心臓が早鐘を打ち、呼吸が荒い

体は汗でぐしょ濡れだ

今まで話しかけられることはおろか、認識されたことすらない

次はない

耳元でそう聞こえたが、部屋には自分以外誰もいなかった

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