掌編怪談「木」

最近疲れがとれない

食べても食べても腹が空く

どれだけ食べても太るどころか痩せる一方だ

病院でも原因が分からない

ストレスのせいだろうか

睡眠の質も悪いのか、変な時間に目が覚める

朝方なら良いが、夜中に目覚めると何故か部屋に木が生えている

これが人ならば悲鳴を上げて逃げるだろうが相手は木だ

ストレスで見える幻覚だと思い無視をする

ある日、窓から差し込む光に照らされた木の幹に違和感を覚えた

ボーッと眺めていて思い出した

子供の頃に遊び場にしていた場所に生えていた木だ

木には縄張りを主張するかのように自分の名前を彫っていたので間違いない

急遽休みをとって地元に帰る

いつ切られたのか、木は無くなっていた

なんとなく木のあった場所で手を合わせる

俺は何故か地面に倒れた

体に力が入らず、動くことが出来ない

混乱していると目の前の地面が隆起し、植物が顔を出した

その植物は凄い勢いで成長を続け、あっという間に掌ほどの大きさになった

体が少しずつ地面に溶けていくのが分かる

俺はここで養分になるようだ

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