掌編怪談「童謡」
やることもなく、公園のベンチでただ空を見上げていた
ふと視線を横に向けると、電線に鳥がたくさん止まっている
思い付きで電線を五線譜に、鳥を音符に見立て鼻唄を口ずさむ
これが意外と悪くない
急いで帰宅して譜面に起こす
どんどんインスピレーションが湧き、ついに童謡が完成した
作曲に至った経緯から「ことり歌」と名付けたこの歌は、発表するとたちまち人気になった
それから十数年経ち、「ことり歌」は今では定番の童謡となっている
有名になった影響か、巷ではこんな都市伝説じみた噂が流れている
開発によって住処を奪われた鳥達の恨みが込められていて、「ことり歌」を聞くと子供を奪われる
と言うものだ
馬鹿げた噂話だが、作者である私にもこの都市伝説に心当たりがある
私の妻も三度流産している
不謹慎なのは分かっているが、どうしても紐付けてしまう
これは偶然
「ことり歌」を流すと鳥が集まってくるのも偶然
鳥達が歌にあわせて鳴き始めるのも偶然
そう、きっと全部偶然なんだ
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