掌編怪談「幻想」

ひゅーどん

ひゅーひゅーどんどん

夏の夜、暇をもて余しているとどこからか花火の音が聞こえてきた

まだ夏らしい事をしていなかったので見に行こうと外に出る

光が見えないので音を頼りに歩みを進め、近所にある公園の池にたどり着いた

音はかなり近い

だが未だに花火が見えない

もう諦めて帰ろうかと考えていると

ひゅーどん

その音と同時に池が光った

池に大きな花火が写る

咄嗟に空を見上げるが花火は上がっていない

どういう原理かは分からないが、水面にのみ花火が映っている

気にせず花火を楽しむことにした

途中、なんとなく小石を池に投げ入れる

すると池の鯉が一斉に跳ねだした

暫くして静まったが

それ以降、花火が写ることはなかった

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