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那須雪崩死亡事故の判決が出ました。

こんにちは。
雪崩事故の刑事事件判決についての話です。

平成29年、栃木県那須町のスキー場周辺で登山講習中の県立大田原高の生徒ら8人が死亡するという痛ましい雪崩事故がありました。

民事事件の判決は過去に決定していて、今回は刑事事件に関する判決です。
宇都宮地裁は30日、業務上過失致死傷罪に問われた教諭ら3人に禁錮2年の実刑判決を言い渡しました。

判決の要旨は、積雪状況を見誤り、訓練区域を明確に設定しないなど、教諭らが訓練開始前から過失を重ねた末の惨事を「相当重い不注意による人災」であると断じました。

昔の事件なので内容については、ご遺族作成の再現映像を参考にしてください。

この裁判の争点としては、当時の天候を鑑みた上で
  ① 雪崩発生を予見できたのか
  ② 事故を回避するために安全確保の措置を講じたのか
が主な争点となりましたが、判決で指摘したのは複数の過失でした。

当然、被告の弁護側は、無罪を主張した上で
 ① 積雪は約15センチで「雪崩を予見できなかった」
 ② 情報収集を尽くして、明確に訓練内容を変更し伝えていた。

と主張しましたが、判決では
 ①「少なくとも30センチの新雪があった」と認定。
 ② 現場は植物がまばらな急斜面、雪崩予見は十分可能だった。
 ③ 訓練区域は明確に設定されていなかった。
 ④ 危険区域に生徒らが入った後も「下山指示を積極的に出さず訓練を続けた
  と、全体にわたって事故回避のための措置を取らなかった過失を認定しました。

さらに、量刑を計る背景事情として

高校の部活動に関連する死傷事故としては、類を見ない大惨事を引き起こした。被害結果の重大性は量刑判断に当たり、まずもって指摘せざるを得ない。

生徒が主講師の指示に従わなかったなどとも受け取られかねない内容を含む不合理な弁解をした3人に、遺族が厳重な処罰を求めていることも当然の心情として理解できる。

被告3人の共同過失については、県内で登山講習会が慣例として開催された中でいわゆる正常化バイアスが影響した可能性がある。

3人の刑事責任の軽重に格段の違いはない。
執行を猶予すべき事情があるとまではいえず、いずれも実刑を免れないと判断して、主文の通り刑を量定しました。

との厳しい指摘がありました。

私も、以前は山岳警備隊員として活動していた中で、隊員の育成のための訓練をいくつも立案してきましたが、特に厳寒期の訓練では、フローチャートをいくつも作成して、リスクが高まればいつでも撤退できるように計画していました。
それでも、冬季の気候は簡単には読めないのが現実で、特に雪山に入る前には弱層テストという「今の積雪状態から表層雪崩の発生危険性を見定める」ストレステストをしてから入山を判断する「石橋を何度もたたく」方法を取っていました。

確かに、冬山を克服するには、雪山に潜む危険と対峙し理解することは大切ですが、実際に若い命を落とすことになった現実は、相当重い量刑判断になったのだと思います。

亡くなった学生のご冥福を祈るとともに、今回の教訓が生かされることを期待しています。

お付き合いいただきありがとうございました。







本件犯行は栃木県の高体連主催の下に、各高校の課外クラブ活動として山岳部などの生徒らが参加した登山講習会で、雪上歩行訓練が行われた際、被告3人の共同過失および個別過失を競合させ、生徒らが標高1400メートルを超える山域の斜面に達して移動するなどしていた中で発生した雪崩に遭遇させ、生徒7人と教諭1人の計8人を死亡させるなどした。

 被害結果は非常に重大といわなければならない。突如としてわが子を失った遺族の心痛は察するに余りある。

 講習会の責任者などとして主催する立場にあった被告3人が訓練を開始するに当たっては、学校教育活動などの一環として被害者らの安全確保が強く求められていた。

 前日からの新雪が少なくとも30センチに達していたことなどから、雪崩発生の危険を把握できる外形的状況にあった。危険性を予見することが十分可能だったと認定できる。本件訓練は、重大な危険を看過し、安全な区域を限定して周知するなどの基本的な回避措置を講じないなど、相当に緊張感を欠いたずさんな状況の下に漫然と実施された。

 被告3人の共同過失については、県内で登山講習会が慣例として開催された中でいわゆる正常化バイアスが影響した可能性がある。雪崩という自然現象を背景とし、発生の確実な予測が困難であるという特質を踏まえても、相当に重い不注意による人災であったといわなければならない。

 講習会会長などとして関与した猪瀬修一被告、副会長兼主任講師などとして関与した菅又久雄被告、主講師などとして関与した渡辺浩典被告の各刑事責任はいずれも軽視できず、実刑を選択すべき領域に及んでいる。3人の刑事責任の軽重に格段の違いはない。執行を猶予すべき事情があるとまではいえず、いずれも実刑を免れないと判断して、主文の通り刑を量定した。




那須雪崩事故の判決公判が開かれた宇都宮地裁の法廷=30日午後(代表撮影)

また、安全確保が強く求められる学校教育の一環として行われた講習会だったことも重視した。


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