日本中世の職能民①

皆様、おはようございます。
今回は、日本中世の百姓に続き、平凡社ライブラリーから出ている網野善彦先生の『日本中世の百姓と職能民』から、職能民をクローズアップして紹介していきます。
何せ、もとの本がかなりの文量ですので私が今回の学びで必要だな。って思った箇所をピックアップしています。
もし、これを読んで気になった方はぜひ本屋さんや図書館で全文読んでみてください。
来年には網野善彦先生亡き後の最新の日本中世、特に室町時代辺りをご紹介する予定なので、前提知識として知るにはいいかと思います。
また、榎並猿楽から離れて…とかツッコミを入れられる前に、補足しておくと榎並猿楽自体は本を残しておらず、世阿弥や室町時代の情勢など他の人から見た角度でしか研究が出来ないのが実情です。(あれ、これ前も書いたか?)
他にも大阪市東部や摂津国のことを書く機会が出てきても、この日本中世の時代に変化した職業や女性に対する考え方は、知っておくと後の江戸時代の話しや戦国時代にどう繋がっていたか。
場合によっては、戦時中や今にも繋がる何かが薄らと見えることが、小説や専門書などジャンルを問わずに読んでいて朧気ながらに推測が立てられるようになったりすることも。
そのために、今しばらくは榎並猿楽と日本中世の世界をぜひ一緒にどっぷりハマってくださいませ。

という訳で、今回のテーマは全5回の予定で構成してます。早速1回目に入りましょう!


職人


・「職人」と「職」

 手工業者を指す語として広く用いられた「職人」という言葉が、どのような経緯を経て成立してきたかは鮮明ではない。しかし、13世紀後半から14世紀にかけて、文献に現れる。
『東宝記』中の塔婆の項にみえる弘安八年(1285)に修理大工、鍛治大工、鋳師大工、螢師大工などの署名に「南方西間職人」とあるのが、当日の書ならば、最も早い例である。
確実な例は「東寺執行日記」貞治三年(1364)四月十四日条であり、鎌倉末期に遡り、戦国期にはほぼ定着したものと思われる。

中世において広く用いられた「職人」の語は、下級荘官・在庁官人を指し、寺院においては下司職・田所職等の「職」からだろう。
西国の王朝国家が「職制国家」あるいは「職の体系」と言われる特質を持っている。
多様な「芸能」とその「道」を重んずる社会の風潮があり、また他方にはそれを同族・子孫に伝えることによって、特定の「芸能」を家業として「職」を保とうとする強烈な志向が働いていた。

・「職人」の存在形態

 「職」の体制の成立は、もとより体制そのものの力に多少とも依存しているにせよ、自力で得分の取得をなしうる自立した同族集団の存在を前提としている。
 上級の「職」の場合、得分は主として荘園・公領を基礎としており、「職人」の場合も給免田がその一つの源泉だが、「道々の者」の給免田が、荘官・在庁官人に比べて狭小であり、職種によってはそもそもないことも。
 活動形態に即して、中世前期の「職人」を、広域的な遍歴を常とするもの、注文主の職場での仕事をもっぱらにし、比較的限られた地域で活動するものとに、一応大きく分類ができる。

・「職人」の組織

 中世の「職人」の日常的・制度的な組織としては、まず「座」を考えるのがふつうであるが、東国の問題を考慮するとひとまず西国に限定しておく。
 例えば、鋳物師の場合、平安末期から鎌倉初期にかけて、左右両方の灯炉供御人、東大寺鋳物師の三集団が成立する。しかし、「座」の形態をとらず、供御人の組織は、蔵人所側では蔵人所小舎人が年預となり、諸国に散在する鋳物師は番に結ばれて番頭に統括された。南北朝内乱期までは、一応実質的に維持されていたが、それ以後は国や地域ごとに統括され、「座」が史料に現れてくる。

「座」のあり方は、基本的には鋳物師の組織と同じだろう。もっとも早く「座」のみられる田楽や、惣官にあたる長者に率いられた法勝寺後戸猿楽など、芸能民についても同様だろう。

室町期から「屋」に根拠を置く「職人」は広くみられるようになっていく。これは、都市が本格的に姿を現すことによる転換だろう。

・東国の「職人」

 東国の「職人」の中にも、広く各地を遍歴する人々がいたと思われるが、その通行権の保証は幕府であった。ちなみに西は天皇や神社が保証していた。
室町時代は、関所の寺社への寄進が鎌倉公方によって行われていた。
西国とは異なる「職人」の組織のあり方だったと考えられるかもしれない。

本日のまとめ

 今回はえらくザックリとまとめているな。と思われるでしょうが、根拠の史料や前後関係を滔々と述べると、ただの網野善彦先生の本を書き写しただけの記事になりかねない。
それほど、沢山の詳しい事例を紹介されている著者であり、また現在の人が考える職人や職に対するイメージと異なっていたことが1回目から何となくお届けできたでしょうか?
次回は、職能民の中の神人・供御人制についてご紹介したいと思います。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。
次回もどうかよろしくお願いいたします。

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