LEGO 部品を利用した回転型倒立振子のレシピを公開!(第 1 回:製作編)
以下の動画は,SCI22 でのプレゼン資料(音声入り)です
以下の動画は,デモ用の振り上げ安定化制御です.
1. はじめに
工作に自信がない人でも,比較的,簡単???に「回転型倒立振子」を製作するできることを目指して,本記事を書きます.
なお,モノによっては,発注してから届くまで1ヶ月半程度を要します.これは,輸入品であったり,受注生産であったりするためです.届くまで,気長にお待ち下さい.
# 2022/05/29:公開
# 2022/05/30:LEGO 部品表の画像を追加
# 2022/05/30:LEGO 部品表の PDF ファイルを追加
# 2022/05/30:LEGO 部品表の Excel ファイルを修正
2. 部品の調達
2.1 LEGO 部品の調達
「回転型倒立振子」の筐体は,LEGO 部品を利用して製作をします.
部品表の Excel ファイルはこちらから入手できます.
部品表の PDF ファイルはこちらから入手できます.
EV3 replacement pack3 以外はブリッカーズさんから購入できます.
EV3 replacement pack3 はアフレルさんから購入できます.
ちなみに,私は教育用 LEGO MINDSTORMS EV3 の基本セットと拡張セットを多数,所有しているので,その中から部品を調達しました.
2.2 モータと関連部品の調達
まずは,調達する部品のリストです.
エンコーダ付ギヤード DC モータ〔FIT0481: Micro Metal Geared motor w/Encoder – 6V 530RPM 30:1〕(DFRobot 社)・・・ 必要個数:1 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先1(スイッチサイエンス),購入先2(Digi-Key)モータブラケット〔黒,2 個入〕(Pololu 社)・・・ 必要個数:1 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(朱雀技研工房ストア)D カット 3mm 軸用アダプタ〔Motor Shaft Adapters,2 個入〕(Tenka 社)・・・ 必要個数:1 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(国内では取り扱っていないので,Tenka 社から輸入してください)バインド子ネジ 〔M2 × 18〕・・・ 必要個数:2 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(モノタロウ)〔50 個入〕とか …ワッシャー 〔M2〕・・・ 必要個数:2 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(モノタロウ)〔50 個入〕とか …六角ナット 〔M2〕・・・ 必要個数:2 個
$${\Longrightarrow}$$ モータブラケットに付属のものを利用
それでは,個別に説明します.
まず,モータについてです.
エンコーダ付きのギヤード DC モータとしては,DFRobot 社の Micro Metal Geared motor w/Encoder を使用しています.ギヤ比(減速比)に応じて 7 種類が用意されています.今回は,アームや振子が軽量であるので,速応性を考慮して 30:1 のモータを使うことにしました.
FIT0481 (Micro Metal Geared motor w/Encoder – 6V 530RPM 30:1)
FIT0482 (Micro Metal Geared motor w/Encoder - 6V 310RPM 50:1)
FIT0483 (Micro Metal Geared motor w/Encoder - 6V 155RPM 100:1)
FIT0484 (Micro Metal Geared motor w/Encoder - 6V 105RPM 150:1)
FIT0485 (Micro Metal Geared motor w/Encoder - 6V 75RPM 210:1)
FIT0486 (Micro Metal Geared motor w/Encoder - 6V 52RPM 298:1)
FIT0487 (Micro Metal Geared motor w/Encoder - 6V 41RPM 380:1)
国内では,DFRobot 社のモータを,スイッチサイエンスさんなどから購入できます.スイッチサイエンスさんの場合,輸入取り寄せの商品なので,納期は1ヶ月半程度だそうです.
私は利用したことがありませんが,米国の会社である Digi-Key さんは,日本語のサイトがあるだけでなく,日本語での電話,メールをサポートしているようで,在庫に応じて即日出荷してもらえるようです.
DFRobot 社のモータ (Micro Metal Geared motor w/Encoder) は,エンコーダが最初から取り付けられているという,うれしい仕様です.電源が供給されると,エンコーダ基板の緑色の LED が点灯し,おしゃれ???です.磁気式のインクリメンタル型であり,分解能は 7 PPR(パルス / 回転)です.モータのギヤ比 (減速比) は 30:1 なので,4 逓倍でカウントすると,$${ 30 \times 7 \times 4 = }$$ 840 [カウント / 回転] なので,約 $${360/840 = }$$ 0.42 [度 / カウント] となります.
モータ軸の長さを除くと,DFRobot 社のモータは Pololu 社のモータとほぼ同じサイズです.したがって,Pololu 社のモータ用の様々なアクセサリを利用することができます.今回は,Pololu 社のモータブラケットを利用して,モータを LEGO 部品で製作された土台部に結合します.また,Tenka 社の 3mm 軸用アダプタを介して,モータ軸と LEGO 部品で製作されたアーム部を結合します.
Pololu 社のモータブラケットは,たとえば,朱雀技研工房ストアさんから購入できます.これは,「ブラケット」が 2 個,M2 の「なべ小ねじ」が 4個,「六角ナット」が 4 個,入っています.
本来の使用方法は,「ブラケット」のねじ穴に「六角ナット」をはめ込み,「ブラケット」の反対側から「なべ小ねじ」で締めるというものですが,この実験装置の製作では,異なる使用方法となります.
「LEGO 部品」と「ブラケット」の穴の間隔は,少しずれています.そこで,「ブラケット」のねじ穴に M2 x 18 の「バインド小ねじ」を通し,反対側に取り付けられた「LEGO 部品」の穴も貫通させます.そして,LEGO 部品側の穴に M2 の「ワッシャー」をはめ込み,M2 の「六角ナット」で締めます.詳しくは,後述します.
M2 x 18 の「バインド小ねじ」や M2 の「ワッシャー」は,大きなホームセンターであれば,売っているかもしれません.ネットで購入するには,たとえば,モノタロウさんの場合,M2 x 18 の「バインド小ねじ」はここから,M2 の「ワッシャー」はここから購入してください.M2 の「六角ナット」は,Pololu 社のモータブラケットに付属しているものを利用します.
モータ軸に LEGO 部品で作られたアームを取り付けるために,Tenka 社の D カット 3mm 軸用アダプタ (Motor Shaft Adapter) を利用します.Motor Shaft Adapters は日本国内では販売していないので,Tenka 社から直接,購入する必要があります.2 個入で 0.99 ドルなので安いのですが,送料が 26.36 ドルですので,余裕をもった個数を購入するのが良いでしょう.ちなみに,私は 30 セット(60 個)も購入しました …
さて,このアダプタは Pololu 社のモータ用に製品化されたものなので,D カットの 3mm 軸に合うよう設計されています.DFRobot 社のモータは Pololu 社のモータと軸の形状は同じなので,このアダプタを利用できます.
D カットに対応しているので,負荷がかかった状況で使用しても,力をロスすることなく回転させることができます.
2.3 エンコーダと関連部品の調達
まずは,調達する部品のリストです.
光学式エンコーダ〔E20S2-360-3-V-5-R〕(AUTONICS 社)・・・ 必要個数:1 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(ミスミ社)LEGO ホイール用 2mm 軸用アダプタ(Pololu 社)〔2 個入〕・・・ 必要個数:1 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(朱雀技研工房ストア)なべ子ネジ 〔M2 × 8〕・・・ 必要個数:2 個
$${\Longrightarrow}$$ 購入先(モノタロウ)〔160 個入〕とか …ワッシャー 〔M2〕・・・ 必要個数:2 個
$${\Longrightarrow}$$ 前節でモータ用に購入
エンコーダ軸に LEGO 部品を取り付けるため,Pololu 社の 「2mm 軸用アダプタ」を利用することにします.Pololu 社からは「3mm 軸用アダプタ」も販売されていますが,これは,六角軸に対応したものですので,エンコーダに利用することが困難です.
「2mm 軸用アダプタ」を利用するために,
軸径が 2mm
分解能がある程度高い
エンコーダ側のねじ穴の間隔が LEGO 部品の穴の間隔とほぼ同じである
という条件を満足するエンコーダを選定する必要があります.これらの条件を満足するエンコーダをいろいろと探しましたが,最終的に,AUTONICS 社のインクリメンタル型の光学式エンコーダ E20S2-360-3-V-5-R を利用することにしました.価格は 9,160 円です(2022/05/30 現在).
なお,受注生産のようで,購入手続きをしてから届くまで,1 ヶ月半くらいを要します.
このエンコーダの分解能は,360 PPR(パルス / 回転)です.4 逓倍でカウントすると,$${ 360 \times 4 = }$$ 1,440 [カウント / 回転] なので, $${ 1440/360 = }$$ 0.25 [度 / カウント] となります.振子の角度検出用としては,十分の精度でしょう.
3. 組立図
3.1 振子部の組立図
振子部の組立図の PDF ファイルは以下から入手できます.
pendulum.pdf
振子部は非常に単純な構造で,4 個の LEGO 部品で構成されています.
LEGO なので,振子の長さを変えたり,重さを変えたりすることも容易です.
3.2 土台部の組立図
土台部の組立図の PDF ファイルは以下から入手できます.
body_step1.pdf body_step2.pdf
body_step3.pdf body_step4.pdf
body_step5.pdf body_step6.pdf
土台部の組立図において,ステップ 1 からステップ 3 まで(body_step1.pdf,body_step2.pdf,body_step3.pdf)は,指示にしたがって組み立ててください.
ステップ 3 では,EV3 replacement pack3 に含まれる部品を「おもり」として装着していますが,購入していない場合は,無視してください.
つづいて,ステップ 4 に進む前に,モータを LEGO 部品と結合します.
まず,Pololu 社のモータブラケットに DFRobot 社のモータをはめ込みます.モータブラケットは向きがありますので,注意をしてください.
つぎに,モータブラケットのねじ穴に,M2 x 18 の「バインド小ねじ」を貫通させます.
さらに,LEGO 部品 (デザイン ID:99773)
を 2 個,用意し,穴に M2 x 18 の「バインド小ねじ」を貫通させます.
そして,M2 の「ワッシャー」と M2 の「六角ナット」をはめ込み,M2 x 18 の「バインド小ねじ」を締めます.
最後に,Tenka 社の D カット 3mm 軸用アダプタ (Motor Shaft Adapter) を,モータ軸に差し込みます.
以上でステップ 4 の下準備は終了です.
ステップ 4 からステップ 6 まで(body_step4.pdf,body_step5.pdf,body_step6.pdf),指示にしたがって組み立ててください.
以上で土台部が完成です.
3.3 アーム部の組立図
アーム部の組立図のPDF ファイルは以下から入手できます.
arm.pdf
アーム部を組み立てる前の下準備として,エンコーダを LEGO 部品と結合します.
まず,エンコーダ,LEGO 部品 (デザイン ID:99773) と M2 x 8 の「なべ子ネジ」2 個,M2 の「ワッシャー」2 個を準備します.
そして,LEGO 部品の穴に「ワッシャー」と「なべ小ねじ」を通し,エンコーダの前面のねじ穴にしっかりと取り付けます.
つぎに,LEGO 部品 (デザイン ID:99773)
を 2 個,用意し,エンコーダのコードを LEGO 部品の穴に通します.
エンコーダのコードは硬いので,アームを回転させると,バネのような反力を生じてしまいます.そこで,ワイヤーストリッパーで断片的(1 cm くらいごとに)に外皮部分を剥がしてください.
つぎに,エンコーダ軸に「2mm 軸用アダプタ」を装着します.
Pololu 社の「2mm 軸用アダプタ」の製品紹介を見ると,説明文に
とあります.かなりどころか,元のままでは,どんなにがんばっても,モータ軸の先端しか「2mm 軸用アダプタ」の穴に入りません.「2mm 軸用アダプタ」の穴が狭すぎるのです.
したがって,「2mm 軸用アダプタ」の穴を少しだけ拡げる必要があります.少しだけです.拡げすぎるとガバガバになってしまい,エンコーダ軸が空転してしまいます.つまり,「2mm 軸用アダプタ」の少しだけ拡げられた穴にエンコーダ軸を挿し込み,摩擦で固定しなければなりません.
## 心配なら,接着剤を使ってみても良いかも.
「2mm 軸用アダプタ」の穴を少しだけ拡げるために,穴に「2mm の精密ドライバー」の先端をまっすぐに挿し込み,左右に何回か回転させます.このとき,先端は奥に入れすぎないようにしてください.穴を拡げすぎてガバガバになってしまいますので.『少し削っては挿し込めるかを確認』し,慎重に作業を進めてください.
なお,「2mm 軸用アダプタ」の根本が LEGO 部品 (デザイン ID:99773) に接触していないようにしてください.
以上の下準備が終了したら,arm.pdf にしたがって,アーム部を完成させてください.
3.4 完成図
以上でそれぞれの部分ができあがったので,合体させてください.
4. おわりに
今回の記事では,LEGO 部品と汎用のモータ,エンコーダを利用して,「回転型倒立振子」を製作する手順を説明しました.
次回は,MinSeg.com 社から販売されている車輪型倒立振子のキットに含まれている,マイコン MinSegShield M2V5 との接続について説明する予定です.
さて,いつになることやら…
(終わり)