自然派ワインの闇①~理科と算数でマーケティングに対抗~
昨今の自然派ワインについて、以前の記事に少しだけ触れたが長くなりそうだが書いていこうと思う。
空いた時間で書いて行くので横道脱線はご了承下さいね。
以前少し触れたのは、自然派ワインを全否定しているのではなく、欠陥商品を“自然派“とラベリングする事で堂々と販売しているワイナリーが許せないだけで、美味しい自然派ワインは沢山飲んだことはある。
美味しい自然派ワインは大概通常のスティルワインを作っていたワイナリーが多い。
長年の経験を積み重ね自然派として切り替えてるから、そもそものワインへの知識が深いからだろう。
残念ながら日本の新興ワイナリーは自然派ワイナリーだけで勉強し、その知識だけで独立する人もいて、明らかな欠陥ワインを堂々と売っているところがある。日本のこのようなワイナリーは悪意はなく、ただの知識不足だとは思っている。
海外からも自然派をうたってとんでもないワインを日本へ売っているところも多い。こちらは多少悪意を感じる。
何故なら欠陥ワインでも“自然派“ならば、日本やアメリカで環境意識高い購入者が沢山買ってくれるマーケットがあるからです。
自然派は人的コストや生産コストは抑えられるものの、代わりにワイン生産が安定しない。天候や環境がモロに影響する。
そんな不安定なワインを多少の失敗品でも買ってくれるマーケットがあるなら、そりゃ売るでしょう。
実際ソムリエ協会も欠陥ワインが日本を狙い撃ちしている事に注意喚起の記事をあげたことがある。
そんなワインを受け入れているインポーターに悪意はないのだろうか?
一度、大手インポーターが開催する自然派ワイン限定の試飲会へ行ったことがある。
全て海外の自然派ワインでスパークリング、白、赤、オレンジワインまで60種くらいあった。
全て試飲会したが、8割は欠陥か劣化ワインだった。
ちょっと話はそれるが、欠陥ワインと劣化ワインは別に考えている。
欠陥ワインはワイナリーで製造時点か、瓶詰め時点でよろしく無い状態のモノで、劣化ワインは輸送や保存により悪い状態になったモノ、と分けて考えているので、劣化は必ずしもワイナリーのせいではない場合がある。
で、8割は美味しくないと感じた試飲会だが、もちろん、いろんな飲食店や酒屋関係者らしき人達が試飲してるわけだが、概ね、コレは売れそうだなとか、自然派って感じで美味い!って喜んで飲んでる人も居るので、僕の味覚がおかしい可能性も片隅に置きつつ今後読んでいって欲しい。
約60種のワインの中で一番不味いと感じたワインを現場にいたインポーター側のソムリエに『このワインはどのようにお客様に説明しますか?』
と、聞いてみた。
ちなみにこのワインの僕の試飲メモには
“温泉街、使い終わった花火の香り、昨日のすりおろしリンゴ、発酵中の酵母、ゆで卵“とあった。
主に硫黄香、酸化味、酵母香にブドウジュースの雰囲気。
おおよそ自然派におけるネガティヴ要素の“全部乗せ“である。
問題のワインを味見しつつ語るソムリエは『樽由来の印象が強いワインなので、シンプルな塩焼きのお魚か、ムニエルなどが合うと思いますよ。』とのこと。
硫黄由来を樽香に鬼変換した上で
塩焼きとムニエルという全く別の特性の料理を進めるなんて
何にでも合うか、何にも合わないって言ってるようなモノ。
ワンチャン、ムニエルのバター感が硫黄臭をマスキングしてくれるかもしれんが、塩焼きはどんな事になるか鳥肌が立つ。
魚の生臭さとかは硫黄系由来だからそんな合わせ方したら硫黄ブーストかかりそうだ。
僕は性格悪いので、この不味いモノをどう表現するのか聞きたくて、ふんわりしたワインの説明を質問したのですが、まさかのペアリング提案された。
なお試飲会では他にお客様が沢山いたし、ヤバいクレーマーにならないように余計なツッコミせずにその場を後にした。
大手企業の社員ソムリエなので、営業も兼ねて売らざるを得ない。自分の味覚と信念を抑えた上でのことかもしれない。
さて、最終消費者に提供する酒屋や飲食店はどうだろう?
飲食店では提供前に抜栓するので、直前に確認が出来る。多くの飲食店は欠陥や劣化したものは提供しないだろう。
しかし、都心のワインバーのグラス売りでハズレに出くわした事がある。
ソムリエが店主だったが、自然派とはこんなワインです。と言った感じだった。
昔から自然派売りにしてると許容範囲が広い印象はあるな。
酒屋では情報がせいぜいポップのコメントくらいなので、ハズレを引く可能性は高そう。
だが、今のところ街の酒屋で購入してハズレにあった事はない。普通のワインでもブショネの可能性あるが、僅かなブショネは気づかない事もあるし、酷いものは交換に応じてくれるところもある。
自然派はどうなんだろう?
自然派ワインの欠陥、劣化の原因は何か?
自然派に良く出るキーワード“還元“とは?
次回はようやく理科と算数で解析する。
続く