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ある人が植物と直接交流するようになると、その植物は彼のために真の愛の次元空間を形成する。

響きわたるシベリア杉シリーズ 2
アナスタシア
から抜粋させていただきます。😊

p51  桜の木

「..................
私は車から降りて市場に行った。
売り子たちの間を歩いて歩いて歩き回った末に、小さな桜の苗木を三本買った。
それらをトランクにすとんと置いたとき、ドライバーが、三本のうち一本を、すぐ捨てたほうがいいと言った。
根が短すぎるところで切られているから、長くはもたないというんだ。
だが、私はそのまま持ち帰った。
その一本というのはいちばん均整のとれた形のいいものだった。
私は郊外の別荘の庭に、この三本の苗木を自分で植えた。
根が短く切られた苗木には、掘った穴にほかより多めの黒色土を入れ、ピートモスと化学肥料もあげた」

「あなたは化学肥料で助けてあげようとしたけれど、かえってそのせいで、その木の小さい根を二つ燃やしてしまった」

「それでも、あれは生き残った!
春になって木々が芽吹くころ、枝か生き生きとしてきて、そこに小さな葉が現れた。
そのあと、私はあの遠征に出かけたんだ」

「でもその前に、二ヶ月以上もの間、あなたは毎日別荘に車を走らせた。
別荘に着いてまず最初にすることは、その小さな桜の木のところに行くことだった。
ときどきあなたはその木の枝をなでた。
その枝に芽吹いた葉を喜び、水をあげた。
木が風に折れてしまわないよう、支柱を地面に打ち込み、幹をひもで結び合わせた。
ウラジーミル、植物は自分たちにたいする人間の態度に、どのように反応すると思う?
彼らは良い態度、悪い態度を感知すると思う?」

「家にある植物や花はそういうものを感知するって、どこかで聞いたか詠んだかした気がする。
彼らは世話していた人が亡くなると、しおれてしまうことさえあるらしい。
それと、科学者が行った実験についても聞いたことがあるよ。
いくつかの植物にデータ▪センサーを取りつけて、誰かが攻撃的な態度でひとつの植物に近づくと、センサーの針はある方向に動き、また誰かがやさしい態度で植物に近づくと、センサーの針は別の方向に動くらしい」

「ということは、ウラジーミル、あなたは知っているのね、植物は人間の気持ちの表出にたいして反応するということを。
彼らは、偉大なる創造主のご計画どおりに、人間の必要に答えるため、力を尽くしてあらをることをしようとするの。
あるものは身を実らせ、またあるものは美しい花を咲かせて人間のポジティブな気持ちを呼び起こそうとし、さらにほかのものもすべて、われわれの吸う空気のバランスを保ってくれている。
そして彼らの目的にはもうひとつ、とても大切なものがある。
ある人が植物と直接交流するようになると、その植物は彼のために真の愛の次元空間を形成する。
この愛は、地球上のすべての生命にとって不可欠なもの。
多くのダーチュニクは、自分たちの菜園を心からいとおしく思っている。
なぜならそこは、かれらにとっての真の愛の次元空間が形成されている場所だから。
あなたが植えて気づかってあげた、あの小さなシベリア桜の木も、すべての植物が与えられた天命を全うするために行うことを、自ら実行しようとした。
さまざまな種類の植物がたくさんあって、人間が直接交流し、愛をもってそれに触れている場合、植物は人間にとってそれだけ強力な愛の次元空間を形成できる。
彼らは大勢で力を合わせて、人間の魂に良い影響を与え、体を癒すという、人間にとって重要な意味をもつ愛の次元空間を創りだす。
わかる?ウラジーミル。
植物がたくさんあるところでは、彼らはみんなで力を合わせる。
でも、あなたはたったひとつの植物だけの世話をした。
それで、あの小さなシベリア桜の木は、いくつかの植物が力を合わせてやっとできることを、たったひとりでやろうとした。
あの木の切なる望みは、あなたのあの木にたいする特別の態度によって呼び起こされた。
あなたは自分の周りの環境の中で、この小さな木だけが、何も要求せず、偽らず、ただあなたに何かを返そうとしていることが直接的にわかっていた。
嵐のように忙しい一日を終え、疲れ果ててあなたはあの木のところにやってきて、あの木をじっと見ていた。
それで、あの木はがんばろうとした。
夜明けには、ひと筋の細い太陽光線がきらめきはじめる前に、葉は、明けていく空に反射するそのきらめきを懸命につかまえようとし
た。
陽が沈んだあとは輝く星の光を利用しようとした。
そしてなんとか、ささやかながらやりとげた。
その根は、自分を燃やしてしまう化学肥料をうまく避けながら、必要なものを地中から摂ることができた。
地中の樹液はふつうより少し速く木の葉脈を流れた。
ある日あなたはやってきて、そのほっそりした枝々に小さな花が咲いているのを見た。
ほかの苗木には花は咲いていなかったのに、この木だけが開花していた。
あなたは歓喜した。
晴れやかな気分になってあなたは...ウラジーミル、憶えてる?
その花々を見たときにあなたがどうしたか」
「私は本当に嬉しかった。
なぜか気分がとてもうきうきしてきて、その枝をなでてあげた」
「あなたはその枝をやさしくなでながら、『おお、マイ▪ビューティー! きみは咲いてくれたんだね!』と言った」
木は果実を実らすわね、ウラジーミル。
でも、それだけじゃない。
彼らは愛の次元空間も創り出す。
桜の木は、人から受けたものにたいして返す力を、どこで得られると思う?
木はすでに、自分の力の中にあるすべてを与えてしまっていたけれど、かつてないやさしさに触れたその瞬間に、もっと返したいと思った。
自分ひとりの力で!
あなたは長い遠征に出かけて行った。
遠征から戻ったとき、あなたは庭を横切ってまっすぐに庭の木に向かった。
歩きながらあなたは市場で買ったサクランボを食べていた。
木のところまで来て、あなたはその庭の木にも赤い実が三つ垂れさがっているのを見た。
あなたは疲れきった様子で木の前に立って、市場のサクランボを食べ、核を吐きすてた。
そして、あなたの木から実をひとつもぎとって食べた。
それは市場のサクランボより少しすっぱかったので、あなたはあとの二つには手をつけなかった」

「私はいっぱいサクランボを食べていたし、木になっていた実はずっとすっぱかったんだ」

「ウラジーミル、これらの小さな実がどれほどあなたにとって有益なものを含んでいたかをあなたが知ってさえいたら...。
どれほどのエネルギーと愛を含んでいたか。
小さな木はあなたにとって益になるあらゆるものを、地球の深部と、広大な宇宙空間の両方から集めて、この三つの実はひとつだけ食べてみて、あとの二つには手をつけなかった」

「だが、私は知らなかったんだ。
それでも、小さな木が実を実らすことができたという事実は嬉しかった」

「そう、あなたは喜んでいた。
そして...あなたはそのあとどうしたか憶えている?」

「そのあと? 桜の木の枝をもう一度なでてあげた」

「あなたはただなでただけじゃなかった。
あなたは身をかがめて、枝についている一枚の葉を手のひらに載せてキスをした」

「うん、そうした。
とても気分が良かったんだ」

「そして信じられないことがその木に起こった。
それほどの愛を込めて熟成させた実をあなたが食べないとなると、木はあなたのためにほかにいったい何ができる?」

「なんだって?」

「その木は人間から受けたキスにふるえた。
そして人間固有のものである思いや気持ちがその小さなシベリア桜の木から生まれ出て、人間から受けたものを返すために、宇宙にある光の次元空間へ飛んでいった。
愛のキスをしてくれた人間に感謝して、愛の光の感情で彼を温めようとした。
すべての法則に反して、木の想いは宇宙を駆けめぐったけれど、その想いを体現する場を見出だせなかった。
体現できないということが現実化すれば、それは死を意味する。
光の勢力は木にその想いを戻し、木が自身でその想いを破壊して自らの死を免れるようにはからった。
でも、この木は決してそれを実行しようとしなかった。
小さなシベリア桜の木の熱烈な願望はそのまま変わることなく、とてつもなくピュアで敬虔なまま残ってしまっていた。
光の勢力はどうしたものかと途方にくれた。
偉大なる創造主は定められた調和の法則を変えることはなさらなかった。
でも、桜の木は死ななかった。
木が死ななかったのは、その想いと願いと気持ちがあまりにもピュアだったから。
なぜなら、宇宙の法則は、純粋な愛を破壊することを何もにも許していない。
こうして木の想いはあなたの上をただよい、自らを体現できるものを探そうとして、猛烈な勢いで駆けまわっていた。
広大な宇宙の中、たったひとりで、木はあなたのために、愛の次元空間を生み出そうと必死だった。
私はなんとかして木を助けて、木が願っていることをかなえてあげたいと思って、あなたの船に出かけて行った。
それが誰にたいしてのものなのかはまだ知らなかったけれど」

「きみの私にたいする態度は、木を助けたいという、きみの願いからきていたということ?」

「ウラジーミル、私のあなたにたいする態度は、私だけのものよ。
誰が誰を助けているのか、助けられているのか、桜の木なのか私なのか、それを区別するのはとても難しい。
宇宙ではすべてのものが相互に連結している。
あなたは現実に起こっていることを自分で受けとめ、理解しないといけない。
でも今は、あなたさえよければ、桜の木が現実化したいと願っていたことをやってみる。
木に代わってあなたにキスしていい?」

「もちろんいいよ。
それが必要なことなら。
それと、家に戻ったら、桜の木の実を全部食べるよ」

アナスタシアは目を閉じた。
彼女は両手を胸におしあて、そっとささやいた。
「チェリー、これを信じて。
あなたは感じとれるはずよ。
今私はあなたが望んでいたことをするわ。
これはあなたのキスよ、チェリー」

言い終えると、彼女は目を閉じたまま両手をすばやく私の両肩に置き、ぐっと近くに寄り、私の頬に唇をつけて、そのまま動かずにいた。
奇妙なキスだった。
たんなる唇の軽い接触。
だがそれは、それまで経験したどんなキスともちがっていた。
かつて味わったことのない、とてつもなく晴れやかで陽気な感覚が私を満たした。
唇や舌や体の動かし方といったテクニックはおそらく重要なことではないのだ。
大事なのは、人の内面に隠されていて、キスによって表に現れ出てくるものなのだろう。
だが、このタイガの世捨て人の内面にはいったい何が隠されていたのだろう。
彼女はどこで、この知識と、特殊な能力と、感覚とを身につけたのか。
あるいは、彼女が語ったことはすべて、たんに彼女のイマジネーションが生み出したものなのか。
しかしそれならば、内なる私のすべてを温めた、あの途方となく陽気でうっとりするような感覚はどこからきたのか?
たぶん、われわれの力を合わせれば、私が目撃した次の場面から、その秘密を明らかにすることができるだろう。


以上です。😊


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