適応障害で休職中のSさん男性20代①
主訴:5年ほど働いている会社で適応障害と診断され休職中。職場へ行くと体調の悪さが悪化する。感情の浮き沈みが激しいという。
現病歴:5年ほど働いている会社で適応障害、人間関係や仕事が辛いと感じたことはなく、ただ忙しい状態が続いていたという。現在、安定剤服薬中。
所見:浮やや緊 臍周り、右天枢の硬さが顕著。胸鎖乳突筋に硬さあり。
処置:副腎処置、扁桃処置、筋緊張緩和処置
経過:処置後右天枢の硬さがやや取れただけで、臍上の硬さは全く取れない
所見の考察:
右天枢の硬さは長野式、難行によると肺の変動、扁桃機能の低下が疑われる。扁桃は咽頭神経叢(迷走神経、舌咽神経、頚部交感神経)の支配下にある。このことは肉体や精神の疲労の影響を受けることがわかる。仕事の忙しが長いこと続いたことがこの所見を表したと推察する。
では臍周りの頑固な硬さは何を表しているだろうか。長野式の所見によると、臍は脾を反映し津液、粘膜、アレルギーの異常を表す。また長野康司著「よくわかる長野式治療」に似たような症例が挙げられているのでそれを参考にする。長野氏の症例で腹の硬さについて考察されている一文に「気というのは性質上、発散と凝集を繰り返していけば気体→液体→個体になってくる。この患者は、経営者として極度に神経を使い、気を使い続け気が滞り、血流もわるくなり、それが高じてお腹が塊の如く個体になっていったのではないか」とある。長野氏はこの腹部の塊に対して瘀血処置を用いて取り除いたとある。であるならば同じ処置をしているはずなのに効果の違いが出ている。それは自分が腹部瘀血処置に使う経穴が的確でなかったことが考えられる。手三里ではなく尺沢を使用していたと思う。先日、同期Mに腹部瘀血処置を行った際、尺沢から手三里に変えた結果、お腹の張り感はよく取り除くことができた。以上の経験から次回治療時、使用する経穴をよく触診することにより選択することを心がけようと思う。
次回使用予定の処置:
①副腎処置
②扁桃処置
③筋緊張緩和処置
④自律神経調整処置
⑤帯脈処置