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小生の生き様 1

と題したは良いが、小生、さほど長くは生きて居らぬ。

まだ、若僧である。

小生の余命、何事も無ければ、後60年はあろう。
60年以上あるやも知れぬ。

歳は諸君のご想像にお任せするが、小生のこれまでの生き様、
なかなか退屈なものである。

全てを述べるつもりは毛頭無い。退屈だと断っているくらいだから、
真面目に述べたところで、面白くも何ともない ―――

《問い》

唐突ですね。何ですか。

《その1》生まれは?

小生の生まれなんぞ聞いて、どうなるんでしょう?
まあ、分かりませんが、答えてやっても良ござんす。

奈良です。それ以外に答えようがない。小生は、小生が生まれた時のことなんぞ覚えては居らぬ。

《その2》育ちは?

間髪を入れないんですな。育ちは、滋賀です。
滋賀で、嫌なほど健康に過ごして参りましたな。

実は今も滋賀に居る。

《その3》何か意味ありげな言い方ですね?

さよう。小生は、3月に大学を卒業したばかりである。
小生は、4月よりフレッシャーとして、異郷の地、東京で独居をしかけていた。が、間もなくプレッシャーを感じ、退職して、帰郷。

社会人生活、呆気なく終わった次第である。他人は、小生を堕落者と呼ぶだろう。小生自身も、そうだと思っている。本当にダメな人間である、と。

ふざけている様に見えるやも知れぬ。が、これでも、小生、辞めた直後の精神的苦痛は計り知れぬものだった。

小生、会社を辞めたその日、帰郷前に、都風景を目に焼き付けておこうと、隅田川に立ち寄った。

ちょうどいいベンチがあったので、そこに腰を下ろして、ぼんやり周辺の景色を眺めていた。

高層ビルヂングが密に集まる東京。ああいう場所で働く人というのは、小生よりも随分立派な生き方をして来られたのだろうと想像すると、段々と
小生自身がみっともなくて、情けなくて、腹立たしく思えてくるのであった。

ベンチを立とうとする脚が鈍器のごとく重い。

小生、会社を辞めれば、プレッシャーから解き放たれるものと思っていたのだが、そうではなかった。

これから先は真っ暗闇である。小生、未来予想図なんぞ全く描けて居らぬような、この状態で、一体全体いかにして生きていけば良いのだろうか。

ああ、すまない。全く答えになって居らんかったね。

《その4》…. えぇっと、何というか、きっと大丈夫ですよ!まだまだ、この先長いんですから!

うむ。きっと大丈夫であると良いのだが。小生のような無鉄砲で愚鈍な人間に、どのような人生が待っているのだろうか。

今、小生は、いかに進んでいけば良いか、全く見当がつかない状態である。
取り敢えず言えることは、小生、今はどん底を生きているということである。

ただ、この経験は、小生のこれからの人生に幾らか活きて来る気がする。精神的苦痛は負ったものの、小生、立ち上がりもはやいと自負して居る。

小生の生き様なぞと題したが、なに、死ぬつもりは微塵もない。

死ぬ時には、死に様と題している。小生の、今時点での生き様は、非常にだらしのないものだろうが、死に様だけは、格好良くして、死にたいものである。

であるからゆえに、まだ死ぬわけには行かない。小生の人生、全く格好良くない。

いざ、向かわん。格好の良い未来へ。   

2023/4/29

#エッセイ部門



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