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世界一わかりやすい!字余りのキメ方

【字余りって何?】

 字余りとは五七五を‪”‬あえて‪”‬崩すものであって、具体的な意味があって初めて成立するものです。そのためには五七五の韻律の美しさを考え直す必要があります。リズム感が良ければ字余りは許容され易いということです。ちょっと長いですが流し見でいきましょー!


【字余りのコツ】

①字余りは二パターン!?

字余りは、五七五から外れる事から破調(はちょう)とよばれています。五七五を構成する七五調の実態を理解して、字余りをキメていきましょう。
七五調は実際のところ、二音と三音の組み合わせとして発音されます。
例えば
柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺 子規
を私たちは実質の所、
かき/くえば/かねが/なる/なり/ほう/りゅうじ
という風に(大体の人は)発音しています。

この七五調の真実を意識して字余りすると
(1)五七五から外れても五七五に近い発音になるようにする。
⑵五七五に近い発音にすることを諦めて、七五調(2音+3音の組み合わせ)になるようにする。
このふたつが大きく分けた字余りのキメ方二つです。意識してキメていきましょう!。

②母音を揃えてみる

 例えば、夏の季語、山椒魚(さんしょううお)の母音はanouuoであす。これはuの母音が重なっていますね。重なった母音は一音に近い発音をするので、字余りしても韻律が崩れにくのです。発音する時に続けてよんでしまうので。そしてあ行の言葉は、字余りしても韻律が崩れにくい特性があります。(子音の発音をしない為)
例句
さんせうゝを口あゐたまま眠りをり 憂季
私の句です(´>∀<`)ゝ

③「ん」がつく単語を使ってみる

「ん」には、言葉を切って発音させる効果があるため、これまた字余りしてもリズムを変えにくいです。例えば
梅一輪一輪ほどの暖かさ 嵐雪
おんひら〳〵蝶も金毘羅参りかな 一茶
同心円のひかりに咲いて白鳥は いつき
夜空の面叩く撥あり打上花火 憂季
ではそれぞれ、うめいちりん(ueiiin)おんひらひら(oniaia)どうしんえんの(ouineno)よぞらのめん(ooaoen)といった母音が字余りを成立させています。

④繰り返しを使ってみる

 短い五七五の中で、頑張って繰り返し同じ言葉を使うことで独自の韻律を刻むことが狙えます。
例句
ひとも旅人我も旅人春惜しむ 青邨
人も蟻も雀も犬も原爆忌 遊子
つばめつばめ泥が好きなる燕かな 綾子

①字余りの方向性を意識する
②母音を揃えてみる
③「ん」がつく単語を使ってみる
④繰り返しを使ってみる
これらの合わせ技はよりgoodです!名句と呼ばれる句は大抵多くの要素を取り入れています。

【上五の字余り】

 字余りの中では、最も簡単です。(難しい技である字余りの中ではね!)
上五で崩れたリズムは下五中七によって取り戻し得る事が多いからです。上五にインパクトのある字余りで強烈な切れを発生させ、中七下五は切れ字なし、というのが最もキメやすいパターンです。
例句
旅に病んで夢は枯野を駆けめぐる 芭蕉
金魚大鱗夕焼け(ゆやけ)の空の如くあり 虚子
露人ワシコフ叫びて柘榴(ざくろ)打ち落とす 三鬼
すみれそよぐ生後0日目の寝息 紗希

【下五の字余り】

 独特の余韻を生む効果があります。‪”‬‪あえて”‬リズムを崩すことを狙う、上五の次に難しい字余りです。口語(話し言葉の句)によく使われている気がします。
例句
みちのくの星入り氷柱吾(われ)に呉れよ 狩行
みちのくの鮭は醜し吾もみちのく 青邨
約束の寒の土筆を煮て下さい 茅舎

【中七の字余り】

中八とも呼ばれる、字余りの中でも最も難易度が高いものです。だって575のリズムの真ん中を崩す分けですから、韻律を守るのは至難の技です。
まず、俳句を五/七/五を一区切りとして、一拍置いて発音すること考えて見ましょう。
①②③④⑤○/①②③④⑤⑥⑦○/①②③④⑤○/
これを上手く中八に当てはめると、
①②③④⑤○/①②③④⑤⑥⑦⑧/①②③④⑤○/
といった具合になります。これなら五七五に近しい発音が出来ます。その為には「上五で強烈な切れ字を体言止めなどで発生させ、中八と下五を続けて発音させる」必要があります。まとめると、
①中八と下五と続けて発音させる必要がある。
②上五に強烈な切れ字を発生させる必要がある。
この二つが中八をキメる最低条件です。芭蕉の初期に中七の字余り(中九)が流行りましたが、あれは例外として考えました。
例句
雀の子そこのけそこのけお馬が通る 一茶
舞姫はリラの花よりも濃くにほふ 青邨
春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 登四郎
水脈(みお)の果て炎天の墓碑を置きて去る 兜太


【最後に】

 例句に何度も名前を挙げた山口青邨のように、字余りの秀句を詠むのは呪術廻戦でいう反転術式の習得くらい難しいことです。ですが「何故五七五なのか」「何故季語がいるのか」などの疑問を抱き、その答えを自分なりに考えることは俳筋を鍛えます。
常識を疑うからこそ斬新な俳句を詠めるのです。
まずは五七五の定型を守る事を考えて詠み、これに気詰まりを感じた時に、初めて字余りを考えることを強く勧めます。ここまで読んでくれた人、本当にありがとう!

9/23一部過筆&修正


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