[3分]短編小説/灰色の世界
この世界は灰色に見える。僕の世界には白と黒しかない。
朝、いつものように眠い目をこすりながら家を出た。通学路の風景はいつもと変わらない。曇った空に、薄暗いコンクリートの建物が並び、通りを行き交う車は音だけを残して消えていく。歩いている人々も同じように無表情で、僕のことなんて気にしていない。僕も彼らを気にしていない。関わり合いになる必要もないし、何かを求める気もない。
学校に着くと、いつものように教室に入る。別に誰とも話さない。隅の席に座り、ただ机に突っ伏す。授業が始まっても、適当にノートを取るだけ。教師の声は背景音と化している。周りではクスクスと笑う声や、紙をめくる音が響くが、それもすぐに消えていく。
そんなとき、教室が少しざわついているのに気づいた。なんだろうと顔を上げると、教壇に一人の女の子が立っている。転校生だ。教師が何か話しているが、僕には興味がなかった。誰が来ようと、僕の世界は変わらない。彼女が何者だろうと、何かしら特別な存在だろうと、僕には関係ない。周りは少し興奮しているみたいだが、僕にとっては、またいつもと同じ日常が続くだけだ。
「〇〇さん、空いてる席にどうぞ」という教師の声が響く。彼女が僕の近くの席に座るのが見えたが、僕はそのまま顔を伏せた。関わる必要はない。関わったところで、何も得られないだろう。
昼休み、クラスの連中が転校生の話で盛り上がっている。誰かが「かわいい」とか「何話そうかな」とか、どうでもいい話をしているのが耳に入ってくる。彼女は他県から来たらしい。そんな話にもまるで興味が湧かない。人が増えたって、僕の世界は変わらないんだから。
放課後、いつものように校門を抜けて家に向かう。転校生がどうだったかなんて考えることもなく、ただ足を運ぶ。空は相変わらず曇っていて、風が少し冷たくなってきた。季節が変わるのかもしれない。だが、僕の中には何も変化がない。
結局、あの子が来たって、何も変わらない。彼女がどんな人でも、周りが彼女にどんなに興味を持っても、僕には関係ない。すべてが無意味で、すべてがつまらない。だからこそ、僕はこれからもただ、こうして日々を過ごしていくんだろう。何も期待せず、何も望まず、ただ時間が過ぎていくだけ。
だって、この世界は灰色に見えるから。
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