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脳卒中患者にもCPGを考慮したアプローチは大切なのか?

先日、インスタのフォロワーさんからご質問をいただきました!
まずはありがとうございます。

👇👇👇

ということで、今回は

CPG(セントラルパターンジェネレーター)と脳卒中の歩行について一緒に考えていきましょう!



まずは文献的にヒトのCPGと脳卒中後のCPGと歩行の関係について学びましょう。

人間にセントラルパターンジェネレーター(CPG)は存在するのか?

セントラルパターンジェネレーター(CPG)は、脊髄レベルでリズム的な運動(例: 歩行、呼吸)を制御する神経回路です。動物では広く認められていますが、ヒトにおける存在とその役割には議論があります。

◾️肯定的な意見と根拠

  1. 乳児の反射歩行

    • 新生児期に観察される「反射歩行」は、大脳皮質の関与が未成熟な段階でリズム的な脚の運動が可能であることを示します。これは、CPGがヒトにも存在する可能性を示唆する証拠です(Pang & Yang, 2000)。

  2. 脊髄刺激による歩行リズムの誘発

    • 脊髄損傷者を対象とした研究で、脊髄への電気刺激がリズム的な歩行様運動を引き出せることが示されています(Dimitrijevic et al., 1998)。この現象は、脊髄レベルにCPGが存在する可能性を支持します。

  3. 動物研究からの類推

    • 猿や猫などの霊長類でCPGの存在が証明されており、進化的に類似性があるヒトにも同様の機能が存在すると考えられます(Guertin, 2013)。


◾️否定的な意見と根拠

  1. 複雑なヒト歩行制御

    • ヒトの歩行には、視覚、前庭感覚、大脳皮質からの高次指令が深く関与しています。これらの複雑な制御系は、CPG単独ではヒトの歩行を十分に説明できないことを示唆します(Nielsen, 2003)。

  2. 直接的な神経生理学的証拠の欠如

    • ヒトにおけるCPGの存在を直接証明する神経生理学的データは限定的です。動物研究の知見をそのままヒトに適用することには慎重な姿勢が求められます。


脳卒中患者にCPGを上手く使えば健常な歩行は獲得できるのか?


◾️CPGのリハビリテーションへの応用可能性

  1. 脊髄刺激技術の活用

    • 脳卒中後に損傷を受けた大脳皮質からの随意的な制御が失われても、脊髄レベルでCPGを賦活することで歩行リズムを誘導できる可能性があります(Edgerton et al., 2008)。脊髄刺激や薬理的手法により、歩行様運動を誘発する試みが進められています。

  2. 反復運動訓練

    • ロボティックデバイスや体重支持歩行訓練を通じて反復的な歩行運動を行うことで、脊髄レベルのCPGが活性化し、神経可塑性が促進される可能性があります。このアプローチは、部分的な歩行能力の回復に寄与するとされています(Dietz, 2002)。

  3. リズム運動を活用したアプローチ

    • メトロノームの音などのリズム的な刺激を用いた訓練は、CPGを間接的に活性化し、歩行リハビリの効果を高める可能性があります(Thaut et al., 2007)。

◾️健常な歩行パターンへの回復の限界

  • 高次制御の重要性

    • 健常な歩行には、大脳皮質、小脳、前庭系の高度な統合制御が不可欠です。CPGはリズム運動を生成する重要な基盤となるものの、バランス調整や方向転換などの制御はCPG単独では不可能です。

  • 感覚入力と統合の必要性

    • 足底感覚や筋骨格系からのフィードバックが、歩行制御において不可欠です。これらの感覚情報とCPGの連携がなければ、健常な歩行を再現することは困難です(Grillner & Wallén, 2004)。


CPGと歩行リハへの活用:まとめ

  1. ヒトにおけるCPGの存在

    • ヒト脊髄にCPGが存在する可能性は高いですが、歩行の高度な制御には脳や感覚系からの多層的な制御が必要です。

  2. CPGの活用による歩行リハビリテーション

    • CPGを活性化するアプローチ(脊髄刺激、反復運動訓練、リズム刺激)は、脳卒中後の歩行回復に寄与します。ただし、健常な歩行を完全に回復するためには、大脳皮質の機能回復や感覚情報の統合が重要な要素となります。


CPGに影響を与える神経ネットワーク

CPGの活動は大脳皮質や脳幹・網様体や中脳や小脳に存在する歩行誘発野から影響を受ける


脊髄のCPGは単独で働くのではなくさまざまな情報処理の結果、歩行が生まれます


ただ、こういった神経ネットワークを学べば学ぶほど、泥沼に陥ることがあります。

もちろんこうした神経系を学ぶことは大切ですが、じゃあ今姿勢がさっきと少し変わったけど、これは神経ネットワークの何が変わったの?!と言われたら

今は脳幹網様体が…
今は淡蒼球が…

なんて臨床現場で分からないんです。

もちろん理解することで、観察や現象解釈の幅が広がり、評価や介入の質が高まることもあるので、知ってて損はないです!


CPGを臨床ではどう考えているのか?

Aさんの質問に答えていくのですが、

そもそも僕はあまり「歩行でCPGを働かせよう!」と考えて介入をすることがありません。


なぜそう考えるのか?というと

踵の接地や股関節の伸展でCPGが賦活される!みたいなのはみますが、
踵接地してもバックニーでお尻引けるだけになったり

股関節伸展しないとCPGが駆動しないなら
円背で股関節伸展そもそもしないような
健常のおばあちゃんはなんで歩けるの?!って思っています

Aさんへの返信

これこれをするとCPGが賦活される!なんてのを目にしますが、そういった足底や下肢の刺激を入れても、反射的に正常歩行が引き出されるか?というとそんな単純じゃないよね…って感じています。

すごいセラピストさんならできるのかもしれないですが、僕は全然しっくりこないんです。

健常者でも歩行パターンは違うが、その人らしさがある

健常な人でも、ガニ股、内股であったり、背中丸かったり、バックニー出ていたり、踵接地できてなかったりする人も全然いるのに、なぜか歩行はできてるんですよね。

人間の場合には、先天的なCPGなる神経ネットワークはありつつも、生後のさまざまな経験や価値観によってCPGは影響を受けている気がします。


女性ならガニ股より内股のが女性らしいよね、的な。

ただガニ股の人でも、内股の人でも、 その人なりの歩き方はあるわけで意識しないとその人なりの歩き方になる神経ネットワークは存在するんだろうと思います。

筋シナジー理論(後述)もあるので、人それぞれに歩行時の筋の協調運動パターンにはバリエーションがあると言われています。それがその人らしい歩行パターンを作っていると考えます。

そう考えると、疾患の有無に関わらず、人間の脳には
従来言われているCPGのような先天的な歩行を意識下で遂行するような神経ネットワークは存在しながらも、
後天的にまたは疾患や怪我などのイベントの後には、歩行パターンは変化し、そのパターンを繰り返していく中で、一定のパターンに定着していくようなプロセスがあると考えています。

Aさんへの返信

ここでシナジーの話が出たので、少し解説します。

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