焼肉部位解説⑥ カルビってどこの部位? 輸出・インバウンドに役立つ英語中国語訳付き
ガルビ(갈비)は韓国語で肋骨の周りの肉のこと
今回は、焼肉向けの主要アイテムであるバラ系の各部位について取り上げた。バラとは肋骨(アバラ骨)に近い部位の名称であり、焼肉店のメニューではカルビが一般的である。
焼肉の主要アイテムであるチャックリブやボンレスショートリブ(ボンショー)などバラ系アイテムは、過去においては、欧米での消費は少なく主要部位ではなかった。骨付きのスペアリブやショートリブとしてBBQに使用されていたため、一般的ではなかった。
そのため、カッティングラインなど部位の規格(スペック)が分かりにくかった。本稿ではそれらバラ系の部位を出来るだけ分かりやすく解説したつもりである。
また、カイノミやフランク(ササミ)などは、厳密にいえばランプの部分に近くバラではないのだが、本稿ではこれらの用途が、バラと同じように焼肉が多いためバラ系として解説した。
◎ バラ
【別名】 ブリスケ、ブリスケット、アバラ
【英語】 Brisket, Full Brisket(北米、豪NZ)
【中国語】胸肉(Xiong1Rou4)、牛腩(Niu2Nan2)
【牛の部分】肩に近い胸からロースにかけてのバラ先。“バラ”とはアバラ骨(肋骨)から付いた名称である。肩バラは関西では1番リブから6番リブ(6リブ)、関東・海外では1番リブから5番リブ(5リブ)の部分で分割され、関西のほうが若干大きい。トモバラは10-11番(5リブ)リブまたは12-13番リブ(7リブ)分割される。
7、肩バラ
【別名】 ウデバラ、ブリスケ
【英語】 Brisket, Brisket point cut(北米) Brisket point end (豪NZ)
【中国語】胸肉(Xiong1Rou4)、牛腩(Niu2Nan2)
【牛の部分】肩に近い胸の肉。“バラ”とはアバラ骨(肋骨)から付いた名称である。関西では1番リブから6番リブ(6リブ)、関東・海外では1番リブから5番リブ(5リブ)の部分で、関西のほうが若干大きい。1980年代以前、輸入牛肉ではチャックリブ(三角バラ)が分割されずに付いていた。
【特徴】肉質は硬めでスジがありキメは粗い。霜降りになりやすい部分もあるが、総じて赤身の肉である。
【用途】カレー・シチューなど煮込み料理に最適な部位である。薄切りにして牛丼、焼肉などにも使われる。中華系では煮込み料理(紅焼牛腩、台湾牛肉麺など)によく使われる。
・ 肩バラの小割り部位名称
7-1 三角バラ
【別名】 サンカク、チャックリブ
【英語】 Boneless chuck short rib(北米) Boneless chuck rib (豪NZ)
【学名】 serratus ventralis thoracis
【中国語】三角肩肉(San1Jiao3Jian1Rou4)
【牛の部分】肩バラの一部。 1番リブから5番リブ(5リブ)の部分で、1番リブが短く5番リブが長く形状が三角形になるためサンカクの名称で呼ばれる。海外では1980年代後半の牛肉輸入拡大と1991年の輸入牛肉によって、ブリスケットから分割されたチャックリブが日本向けに輸出されるようになった。
【特徴】肉質は若干硬めだが、霜降りになりやすい
【用途】カルビ焼肉用として多く使用される重要な部位である。
7-2 ペクトラルミート
【別名】 ムナヒレ
【英名】 Pectoral meat(北米)Brisket point end pectoral (豪NZ)
【学名】pectoralis profundus, pectoralis superficialis
【中国語】下前胸肉(Xia4Qian2Xiong1Rou4)
【牛の部分】 ブリスケットの内側にある赤身肉である。深胸筋という筋肉。
【特徴】別名胸のヒレ肉というほど肉質は柔らかめである。スジや脂肪は取り除かれる。
【用途】焼肉、ミニステーキ、サイコロステーキ
8 トモバラ
【別名】 ナカバラ、バラ肉、カルビ
【英語】 Plate(米)Brisket Navel end (豪NZ)
【中国語】肋肉(Le1Rou4)
【牛の部分】リブロースのバラ先側、 牛の肋骨についている筋肉(6-12番リブ)
【特徴】肉質はきめが細かく霜降りになりやすい。呼吸などでよく動く部位であり、胸膜などのスジがあるため若干硬めである。6-8番リブの部分が肉厚である。韓国語ではバラの事をカルビと呼ぶ。なお、一説によるとトモとは漢字では艫と書き、船の後ろの部分を指すことから肉牛の後ろの部位をトモと呼ぶようになったとの事である。
【用途】焼肉、カルビスープ
・ トモバラの小割り部位名称
8-1 ショートリブ (骨付きと骨なしがある)
【別名】 ショーリブ、ボンショー(骨なし)
【英語】 Bone-in Short rib, Boneless short rib(北米・豪NZ)
【学名】serratus ventralis thoracis
【中国語】短肋肉(Duan3Le1Rou4)、五花肉(Wu3Hua1Rou4)
【牛の部分】 リブロースのバラ先にあるチャックリブから続く同じ筋肉である。海外の規格では2リブ以上5リブ以下となっている。最も肉厚なのが6‐8番リブの部分で、この3リブのショートリブが一般的である。
【特徴】肉質はきめが細かく霜降りでバラでは最も肉厚がある。 焼肉店では大変重要な部位であり、カルビメニューの主要食材である。
【用途】焼肉、カルビスープ
8-2リブフィンガー
【別名】 フィンガーミート、ゲタ、ゲタカルビ、肋間筋
【英語】 Rib finger, Intercostal(北米)
【学名】 intercostales externus et internus
【中国語】肋条肉(Le1Tiao2Rou4)、条肉(Toao2Rou4)
【牛の部分】 1番から13番リブの肋骨の間にある赤身肉
【特徴】肉質はきめが細かく、適度にサシもある。肉質は硬めで肋膜が付いている
【用途】焼肉(中落ちカルビ)、シチュー、台湾牛肉麺のトッピングに重要な食材
8-3 ショートプレート
【別名】 ショープレ
【英語】 Short plate(北米)Brisket navel end(豪NZ)
【学名】 transversus thoracis、cutaneous muscles
【中国語】胸排(Xiong1Pai2)
【牛の部分】 肋骨6-12番リブの部分のトモバラからショートリブを外した残りの赤身肉。
【特徴】表面脂肪が多く肉質は硬い赤身肉だが安価。牛丼用食材として非常に重要な部位である。 日本の大手牛丼チェーンのスライス機械の投入口に合わせて9インチ幅(約22.5cm)の四角形に成型している。日本は北米から大量に購入している。牛丼用以外には薄切りにして焼肉食べ放題メニューなどにも用いられている。中国で流行している火鍋にもよく使われている。
【用途】牛丼、焼肉、シチュー、すき焼き、シャブシャブ、中国火鍋
8-4 カルビプレート
【別名】 スーパーパストラミ
【英語】 Karubi plate(北米 豪NZ)
【中国語】五花胸排 *(Wu3Hua1Xiong1Pai2)
【牛の部分】 ショートプレートの肉薄の部分(プレートエクステンション)を取り除いた肉厚の部分。
【特徴】肉質はきめが粗く硬い。安価なので薄切りにして食べ放題メニューなどに用いられている。
【用途】牛丼、焼肉、シチュー、すき焼き、シャブシャブ
8-5 インサイドスカート
【別名】 スカートプレート、ウチハラミ、BSP(ビーフ スカートプレート)、インサイドハラミ
【英語】 Inside skirt, Beef skirt plate(北米 豪NZ)
【学名】transversus abdominis
【中国語】内裙肉 (Nei4Qun2Rou4)
【牛の部分】 横隔膜(ハラミ)付近にある腹横筋である。 肉質は硬めだがハラミ(Outside skirt)に似てサシが入る。
【特徴】肉質はきめが粗く硬い。安価なので薄切りにして食べ放題メニューなどに用いられている。なおハラミは内臓肉に分類され自由化以前も低率な関税で輸入されていたが、インサイドスカートは牛肉に分類されていたため、過去には輸入割当があり制限された関係でハラミほど使われていない。
【用途】焼肉
8-6 カイノミ
【別名】フラップ、フラップミート
【英語】 Bottom sirloin butt flap meat(北米)Flap meat (豪NZ)
【学名】 obliquus externus abdominis、obliquus internus abdominis
【中国語】腹肉心(fu4rou4xin1)
【牛の部分】ショートプレートからモモにかけてお腹の側面にある腹筋で、ヒレ肉の内側にある。バラ肉に分類したが、厳密には、肋骨(アバラ骨)から外れたボトムサーロインにあるためバラ肉とは言えない。
【特徴】肉質はきめが細かくサシもあり柔らかい。
【用途】焼肉
8-7 フランクステーキ
【別名】ササミ、フランク
【英語】 Flank steak(北米 豪NZ)
【学名】 rectus abdominus
【中国語】牛腩排(niu2nan2pai2)、 F肉(F rou4)
【牛の部分】ショートプレートからモモにかけてお腹の側面にある。
【特徴】キメはやや粗くサシも入るが若干硬い。米国ではステーキ用として人気がある赤身肉である。米国での価格が高いためあまり日本には入って来ない。
【用途】ステーキ、焼肉