耐震補強関連のブラケット アンカーボルトにまつわるエトセトラ
タイトルを考えていたら、ある歌が頭の中で無限再生になってきました。「橋 見に行こう あまりにも絵になりそうな 魅力的な? 光る アンカーボルト」
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さて、本題へ。戯言として。
耐震補強や支承取替では、既設コンクリート部にアンカーボルトを定着させてブラケットを設置します。曲げモーメント、せん断力および軸力が作用しますが、これらのバランスによってはアンカーボルトの大径化に悩まされます。
「アンカーボルトの径はいくつまでですかね?」と聞いておくことが肝要な場合も。たとえば上下線の上り線で工事が先行している場合、その際の削孔でのご苦労を反映できるからです。
下部工ブラケットの設計に軸力(アンカーボルト方向の断面力)を考慮するのは、アンカーボルト方向に軸力が入る落橋防止装置(PCケーブルなど)の場合が多いと思います。これに対して、たとえば下部工ブラケットに荷重が上載される場合や、水平力分担構造の上部工ブラケットでは、曲げモーメントやせん断力に対して設計される場合が多いかな。位置関係や形状によりますが。
さて、設計に困るのが、曲げモーメントもせん断力もなかなか大きい場合です。
せん断力に対する設計としては、アンカーボルトの本数とねじ切り部の断面積で設定します。
次に曲げモーメントに対する設計としては、RC単鉄筋断面として設計する方法があります。アンカーボルトがたくさんあるから全部有効なのでは?と複鉄筋断面での計算も頭に浮かんできますが、アンカーボルトでベースプレートを固定しているので、圧縮鉄筋のようには挙動しせず、ただただナットが浮いてしまうだけ。ベースプレートの裏側にもナットがあれば、複鉄筋断面でも良いかもしれませんが、既設コンクリートを斫らないといけないので、単鉄筋断面としての設計計算なのでしょう。いや、そもそも、設計のモデル化として・・・。
この単鉄筋断面での計算が厄介で、曲げモーメントが大きいと、引張鉄筋となる列のアンカーボルトの径と本数を調整したり、ブラケットサイズを大きくして中立軸を調整したりと、なかなか・・・
ちょっと珍しいタイプのベースプレートを拝見する機会がありました。上部工に取り付けられるベースプレートが矩形ではなく、写真のような形状になっていました。中空床版橋のボイドの位置を踏まえながら、配置を調整して効果的な設計にしたのかな?
もう一つの着目点は上部工のベースプレートの取付ボルトです。そう、ボルトです。ここは定着したアンカーボルトをナットで締めるパターンが多いのですが、このケースでは、上部工側にホールインアンカーがあるんですかね?せん断力のみで設計できると、アンカーボルトは小径にできる傾向なので、そういった経緯なのかもしれません。
それにしても、そろそろ標準的な設計方法を知りたいところです。
さて、いろいろと書いてきましたが、実際に設計される方にとっては何か参考になる計算方法が載っている書籍の情報のほうが良いですよね。
支承取替の下部工ブラケットの設計計算などが載っている書籍がありますので、リンクを貼っておきます。
◆第4章 支承・検査路
◇4.1 鋼橋の支承取替えに伴う下部工付きブラケットの設計
◇4.2 PC桁の支承取替えに伴う縁端拡幅部の設計
「兵庫県南部地震により被災した道路橋の復旧に係る仕様(「復旧仕様」)」にも設計計算方法が載っています。
設計の考え方の区別もあり、混同しないようにしたいところですね。たとえば、復旧仕様では、RC縁端拡幅のアンカー筋は押抜きせん断で照査し、鋼製ブラケットは定着長を15Dとしてコンクリートのせん断破壊を照査していない(定着長が15Dあれば、コーン破壊ではなく鉄筋の降伏が先行する)といった点です。私の書き方も良くないのですが、RC縁端拡幅は拡幅側の、鋼製ブラケットは既設下部工側の設計です。なので、どこの何をとらえた設計なのかを間違えないように、慎重さが大事です。
いずれにしても、混とんとしている印象です。最新の情報をもとにするのが良いです。たとえば、定着長が15Dであってもコーン破壊面と縁辺が重複する場合には、土木学会のあと施工アンカー指針案に出ているような端あきを考慮した照査をしておくとか、設置条件を網羅して補えることがありますので。
あとは論文や文献の解説で、実験結果などので経緯確認で理解を深めるとして。
奥が深いなぁ。
以上、個人的なメモとして。