ダブルナットのミステリーw
現場で見ると、いろいろなケースがあるなと思えるナットの緩み対策を、自分なりにひも解いてみました。
既設コンクリート部にアンカーボルトを用いてブラケットを設置するケースがあります。このブラケットを固定するためにはナットで締め付けます。ナットは緩んではいけませんので、緩み止めの対策が必要になります。基本的には1種ナットと3種ナットを組み合わせて使用します。機械系の方なら、たとえば「ロックタイトを使おう!」とか、「ロックナットを使おう!」という選択になり、「1種+3種の組み合わせって、それ美味しいの?」という反応な気がします。経緯はわかりませんが、保全関係の業務では規格の1種+3種で、接着関係や特殊ナットではない印象ですね。まぁ、これは製品指定にならないようにということで、良しとして。
1種ナットと3種ナットの順番
次に1種ナットと3種ナットの順番について。
締め付けられる母材側から3種ナット、次に1種ナットとなります。ここで、建設系と機械系の考え方の違いがあります。(こんなに大きな言い方しなくてもw)建設系では、3種ナット(下ナット)を締めこんで、さらに1種ナット(上ナット)で締めこむという考え方です。一方で機械系では、3種ナットを締めこみ、次に1種ナットで締めこみ、この後で3種ナットを逆回転させて、1種ナットと3種ナットの間に力を伝達させて、ゆるみ止め対策とするというものです。建設系と書いた元の資料はデザインデータブックです。また機械系は「ねじ締結体 設計のポイント」(日本規格協会)に載っています。(ネット上にも情報を提供されているサイトがあります。)
・建設系:下ナット→上ナットを強く締めこみ (ねじの接触面に力を作用させる)
・機械系:下ナット→上ナット→下ナットを逆回転 (ねじ山間に力を作用させる)
この違いの理由を示した資料にまだ巡り合っておらず、個人的には推理小説的で楽しいです。(用途によっての違いの説明は日建連の資料あり)
アンカーボルトのナットをしっかり締めるの?締めないの?
さて、建設系と機械系での違いについて、謎解き的に。
建設系(保全関係)での事例は、支承取替や落橋防止装置関連で設置する下部工ブラケットを想定して。たとえば地震力が作用したときにアンカーボルトに引張力が発生し、これが許容値や耐力までとならない程度に設計します。ですので、アンカーボルトの引張力(断面力)は設置時にはゼロの状態です。ナットを締めると書きましたが、実際にはアンカーボルト本体に軸力を入れるようにはナットを締めてはいけないという設定になります。現場での引張施工試験は別として、施工完了時には3種ナット(下ナット)位置決めとなじみ程度(作用力が発生したら、すぐに応力が発生する)のナット締め付けまでといった雰囲気の話ですね。(たぶん)
一方、機械系では、機械を機能させるために軸力を導入して締め付けられた状態、つまり接合対象がボルト~ナットによって固定された状態にする必要があります。どんな締め付け状態にするかはちょっと置いておいて、ワークを締め付ける必要があり、導入軸力を規定することになります。3種ナットの締め付けでの導入軸力を管理し、・・・となるわけです。
ここまで建設系と機械系で分けた書き方にしてきましたが、部材固定用ボルト・ナット(たとえば付属物の設置)と、地震時用の構造のアンカーボルト・ナットの軸力の発生に合わせた締め付け方の設定があるので、対象とする構造に分けて考えるのが適切ですね。
母材より1種→3種と並んだ時代もあったとか?
さて、母材側から3種→1種と書いているのですが、時代によっては1種→3種の順で設定されていたこともあるようです。古い耐震補強関連のブラケットを見てみると、時として1種→3種の設置となっている場合があります。こういった混沌とした?時代もあったんでしょう。
機能の話は別として、形からすると1種+3種ではなく、2種+3種もあり?と思うのですが、このパターンには巡り合っていません。どこかの資料で2種+2種は載っていたと思います。
(2024-08-04 追記)
S32の建設省の標準設計を見てみると、可動支承のナットは下から2種、次に3種になっているようです。固定支承のナットは2種のみです。座金は入っていないですね。
閑話休題:割りピンやその他の話題
ゆるみ止めではありませんが、ナットの落下防止となれば割ピンが定番アイテムです。設置するとなれば、跨道橋などの場合となります。ねじ切り部分の突出部に孔をあけて割ピンを入れることになりますが、アンカーボルトやブラケットの位置によってはギリギリになるかもしれず、ちょっとドキドキしますね。
さてさて、ナット関係の話となると、
下部工ブラケットのアンカーボルト孔を過剰に大きくしないようにする(座金からの面圧の計算、どうするの・・・?)
座金はJIS規格のものではなく板からの加工物?(JIS規格の座金より厚いものを使う)(材質は・・・?硬度は・・・?)
ねじ部の余長は3山以上となるけど、施工誤差との関連でどのくらいプラス気味にするか?
切削ねじ?転造ねじ?(アンカー径を1サイズ上げたくないじゃん)
といったことも気になりますが、このあたりは触れずに終わります。意外に責任分界点と設計内容の設定が厄介なんでしょうね、この話。。。
以上、愚察でございました。私の頭の中のもやもやを楽しんでいるので、お仕事の参考にはしないでくださいね。
それにしても、マーキングは角度の確認なのか、作業完了なのか、モヤモヤします。
以下、参考にした資料として(文中の書籍についてはリンクなし)
日本建設業連合会さんの資料
https://www.nikkenren.com