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ファッションデザイナー、パコ・ラバンヌ氏がブルターニュの自宅で逝去。翌日自宅が空き巣被害に。

海辺の家でゆったりと余生を過ごす


La mort de Paco Rabanne, couturier autodidacte et pionnier de la mode TF1info

 オートクチュールデザイナーとして1960年代からきらめきを放ったパコ・ラバンヌ氏(Paco Rabanne)が2023年2月3日にブルターニュ北西部の自宅で亡くなった。88歳だった。

 ブルターニュをこよなく愛する有名人は多いが、パコ・ラバンヌ氏は20年以上前からプルダルメゾー  Ploudalmézeau に居を構えていた。ブレストから北に30キロの場所にある海辺の静かな町だ。ガラス張りの大きな窓からは海が独り占めできた。写真は私が撮影したプルダルメゾー中心地の風景。彼の家はもっと静かなところにある。

 偶然彼の家から1キロしか離れていないところに友人が住んでいたので、私は2013年に1週間ほど泊めてもらったことがある。友人と散歩していた時のことだ。何気なく一軒の家を指差しながら「あそこにパコ・ラバンヌさんが住んでいるのよ」というので驚いた。

 その家は海辺に面した場所にあり、塀に囲まれたりしていない。言われなければ有名人が住んでいるとは思わず、近所の家と大差なかったからだ。近くをよく散歩していて、レストランで食事をしたり、魚屋で買い物をしたり、地元の人たちとも気さくに話をしていたそうだ。友人夫婦はその少し前に引っ越したばかりだったので、「まだ会ったことがない」と言っていた。

 彼の66年のオートクチュールデビューコレクションはそれまでの常識を覆すプラスチックやメタルを用いた革新的な作品だった。その後、香水やプレタポルテも販売し人気を不動のものとした。それらを知っていたから目の前に建っている家があまりに普通すぎて本当なのかなと思ったのだ。その後調べてみると子供の頃からブルターニュに住んでいたのだとわかった。

ブルターニュは地上で最も美しいところ


 1934年2月18日、スペイン・バスク生まれ。母親はバレンシアガBALENCIAGAで働き、父親はスペイン共和国軍に所属していた。幼くして父親が内戦で銃殺されたことから、家族でフランスに亡命。この時彼の母親は4人の子供とともに徒歩でピレネー山脈をこえフランスに逃れたという。だからスペインとフランスの国籍を持っている。

 それから母親の友人だった政治家の手引きでブルターニュ・モルレーの近く(プルダルメゾーから東に約60キロ)に住むことになった。その後ゲシュタポ(ナチスドイツの秘密警察)から逃れるためブレストに移り、第二次大戦終結後の1947年まで過ごした。のちに「亡命しひっそり慎ましく暮らしていた自分が世界に名前を知られるようになるとは想像もできなかった」と語っている。

 17歳からパリの国立美術学校で建築を学ぶことになるが、休みのたびに帰るのはブルターニュだった。ブルターニュは彼にとってかけがえのない故郷なのだ。

「1939年2月にブルターニュに着いた時、私は4歳だった。 自分をスペイン人だとは思っていない。 幼少期と思春期をブルターニュで過ごした。私はブルトンだ」

 Télégramme 8 août 2009
   

 このインタビューを読んでパコ・ラバンヌ氏にそれまでにない親近感を感じた。ブルトンとはブルターニュに住む人のこと。ブルターニュではフランスからの独立運動も続いていたので、自分たちのことをフランス人ではなくブルトンであると誇りを持って言っている。そんな人たちが住んでいるブルターニュが私もたまらなく好きなのだ。

 長年ブルターニュに住んでいたので、地元の新聞、テレビ、ラジオ局などのインタビューも数多く残っている。

 「もう一線を退いているからどこに住んでも良い。お金には困っていない。だから地上で一番美しいところに住みたかった。それがここだった。ブルターニュ南部より北部の野生的な風や海が良い。青い海でなく岩に打ちつける白い波を見るのが良い」

Radio France Blue 14 août 2020


現在開催中のパコ・ラバンヌ展


 ブランドとしてのPaco Rabanneは2013年からブルターニュ出身のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)がクリエイティブ・ディレクターを務め売上も伸ばしている。

"Paco Rabanne, de la Tête aux Pieds"

 フランス東部で3月11日までパコ・ラバンヌ展、開催中。

Exposition - Paco Rabanne : De la tête aux pieds !
du 08 décembre au 11 mars 2023


 パコ・ラバンヌ展のビデオもありますのでどうぞ。

VIDEO. Le couturier Paco Rabanne à l'honneur à Oyonnax, capitale française de la plasturgie  
Publié le 14/01/2023 à 15h25  Écrit par Dolores Mazzola.

France3


パコ・ラバンヌ氏の自宅、空き巣被害にあう


 これを書いているとやりきれない悲しいニュースが飛び込んできた。彼は2月3日、金曜日に亡くなったばかり。それなのに土曜日の夜中から日曜日にかけて、家に空き巣が入ったというのだ。前述のように高い塀もなく海岸から徒歩で家に辿り着ける。

 モデルハウスのように洗練された室内には豪華な家具はなかったし貴重品も置いていなかった。もし何か盗まれていたとしても些細なものと思われるが、遺族の心を踏み躙るような死者への冒涜は断じて許せない。

À Portsall, la maison de Paco Rabanne cambriolée après son décès  Jean-Robert 06/02/2023 à 17h48

Télégramme

文責:市絛 三紗


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