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【不思議な体験談】カラオケの部屋がパラレルワールドに繋がっていた話

パラレルワールドの入口って意外と身近なところにあって、
いつどこで隣り合わせの世界へ迷い込んでしまうかわからない。

実際、今いるこの世界が生まれ育った世界とは別の世界で、
いつの間にかパラレルワールドで生活していた。
なんてことだってあるかもしれない。


と、まあこういう類の話って昔からありますよね。
有名なところなら「胡蝶の夢」とか。


今回は、そんなパラレルワールドに迷い込んでしまった
ちょっと不思議な体験談です。



〈完成版の動画〉


〈本文〉

気のせいかもしれないんだけど、ちょっと不思議な、でもおおげざにいうと人生を左右することがあったので聞いてくれ。

友だち……仮にSとTってことにするけど、そのふたりと飲みの後
カラオケボックスに行った。

でまあ、何回かトイレに立つわな。
何回目かのトイレの後。
部屋に入ったら、女の子がいたんだよ。
ま、オレ好みっていったらオレ好み。

その子、歌ってた。
SとTの知り合いが来たのかな、と思いながら

「だれ?」

って聞いたら

「え、おまえの知り合いじゃないの?」

って、ふたりとも驚いてる。
歌が終わって

「あの……、どこかで……?」

って、どうとでもとれるようなリアクションしたら、
笑顔で「やだー」って、演技じゃない感じで言うんだよ。

とりま「ごめん」つって、
飲み物ないよね、とかなんとか言って部屋を出た。

えー……、かわいい感じだったけど、
実は裏の顔があって、知り合いを装った詐欺とか
なんかの勧誘じゃねえの?

オレは、めっちゃ怪しみつつも、テキトーにドリンク持って
もう一度部屋に入った。

そしたら、女の子はいなくなってた。

「さっきの子は?」

ってSとTに聞いたらぽかんとして、
「さっきの子って?」って、真顔で答えてさ。

この話をすると

「違う部屋に入っちゃったんじゃねーの?」
「飲みすぎー」

とかって言われたけど、
いや、だってSとTもいたじゃん、何言ってんの?
ってオレは思った。

まあ、そのときはそれだけ。

また同じメンツでの飲み会のとき、そのカラオケボックスに行ったんだ。
地元だからな、同じとこに行っちゃうんだよ。

トイレから、もどる。
すると、Sはいるけど、Tはいない。

ま、Tもトイレだろうと思って、特に何も言わなかったんだけど、
数十分たったかなあ。

「T、遅いな」

つったら、Sは

「T、これから来んの?」

っていうわけ。
Sと話をしたら、今日は最初から、ふたり飲みだっただろって言うんだ。

あれ? 
前にもあったよな、こういうこと。

そう思って、いったん部屋を出てトイレに行って、
もう一度部屋に戻ったんだけど、そのときはもどってもSだけだった。

もしかしたら、パラレルワールドじゃね?
同じ部屋が並んでいるカラオケボックスの部屋だかドアだかがフックになって、今の自分の世界と、ほんのちょっとだけちがう並行世界が並んでんじゃねーの?

なんて、思いはした。
でも口には出さなかった。
人に言ったら、バカにされるだけだからね。

それから、そこのカラオケには何年も行かなかった。
誘われても、なんだかんだ嫌がって。
信じてたわけじゃないけど、なんだかね。

それから数年。
同窓会ってほどじゃないけど、まあまあ集まりやすいメンバーでのプチ同窓会みたいな会のあと、超久しぶりに、そのカラオケに行くことになったんだよ。
ま、オレも観念して流れで行った。

で、メンバーの中に、友だちがいたーとかいって、その友だちグループとも合流することになった。

その中に、あの女の子がいた。
オレは、とりあえず「はじめまして」の態で接すると、
向こうも「はじめまして」の態だった。

ここで会ったことあるよね? 
って聞いてみたかったけど、やめた。
ただのチャラい誘い文句か、思い込み激しい勘違いタイプの男だと思われたくなかったから。
彼女とはフツーに会話して、他の子たち同様フツーのノリでSNS教えあって。

結局、人生なんて、なにが起こるかわかんないもんだ。
彼女とは、スローペースで、
知り合いからの友人、友人からの彼女って段階ふんだ。

あれから、オレはカラオケボックスにも抵抗なく行くようになったし、
あれ以来、もうあんなことは起こらなかった。

そして、オレは彼女と結婚した。
もう、そのころにはパラレルワールドなんて発想は忘れていた。
たまーに思い出しても、単なる中二病の類だったんだろって。

子どもが生まれて、オレたち夫婦の局面もこれから変わってくんのかなってときになって、彼女が驚くことを言い出した。

「いまさらなんだけど」

彼女は妙に歯切れが悪く、空気も重い。

「あのね……、結婚前の話で、今まで話してなかったことがあるの」

うーん……。
子どもが生まれて、いまさらながらにする告白、か。

「何を言われても驚かないから」

……と、口では言ったものの、内心穏やかではなかった。
浮気か、実はオレの子じゃないとか、色んな可能性が頭の中を駆け巡っていたが、
彼女の口から飛び出した話を聞いて、オレは仰天した。

「あのね。あなたのグループと、わたしのグループとでカラオケボックスで合流したときに、わたしたち、初めて会ったよね?」

「うん」

「ところがね……、わたし、それより前に、あなたに会ってる」

「え?」

彼女が言うには、オレたちが初めてあったと思っていた何年も前。
友だちと、あのカラオケボックスに行ったときの話らしい。

トイレに行って、部屋にもどろうしたところ、知らない人が友達の前で歌っていたというのだ。
おかしいなと思ってうろちょろしているうちに、そいつは部屋からいなくなっていたという。
その人物が他でもない、オレだったというのだ。

「こんなこと言われても、信じられないだろうし、困るだろうけど」

オレは忘れかけていた、あの日のことを思い出した。
信じがたいことだけど、彼女も同じ経験をしていたのか……。

だけど、おかしい。
オレの記憶では、SとTのいるオレたちの部屋に、彼女がひとりで来て歌っていたはずだ。
記憶が、まるで逆になっている。

オレは素直に、オレの経験を彼女に話した。
彼女もビックリしていた。

「よかったー、信じてくれて」

彼女は、驚きよりも、うれしい気持ちのほうが大きいようだった。
その顔を見ていたら、なんだかもう
それがなんだったのかは、どうでもいい気持ちになった。

パラレルワールドかどうかはともかく、
オレと彼女の間には、絆のようなものがあったからこそ、本来の出会いの前に、フライングして出会ったんだと思いたい。

またはその逆で、出会っていたからこそ
後々、正式に出会えて、人生のパートナーとして選ぶことができたのかもって思ってる。

最後はノロケみたいになっちゃったけど、許せ。


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