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体温を測る
日常生活で最も身近な温度計といえば電子式の体温計や液体温度計があるでしょう。
BRCでは実験装置として、体温計と同じ原理のサーミスタや、熱電対を用いた温度計があります。
今回は温度計について触れたいと思います。
温度計の原理
冒頭で触れた温度計について、それぞれの原理をご紹介します。
〇液体温度計
温度変化によって中の液体が膨張/収縮するのを応用したものです。液体は水銀、灯油、アルコールなどが用いられ、ガラス管に封入されています。アルコール温度計と言われているものでも実際は着色された白灯油が使われていたりします。
一般的な測定範囲は水銀で-38~360℃、灯油で-100~200℃、アルコールメインで-200~78℃となります。
また、温度計によって対象物・環境へのさらし方が異なります。全体をさらす完全浸没、最大液面まで浸すもの(全浸没)、定められた部分浸没線まで浸すもの(部分浸没)に分けられます。気温を測定する温度計は完全浸没で、水温を測るものは全浸没もしくは部分浸没です。というのを私もはじめて知りました。恒温水槽で水温を測る温度計とか何も気にせず温度計を挿していたのですが、よくよく考えれば温度による管内気圧変化も考えられるし、納得がいきます。
一昔前は水銀温度計がよく使われていましたが、環境問題もあって現在は製造されていないそうです。
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〇サーミスタ
こちらは温度によって半導体の電気抵抗が変化する性質を利用しております。
現在流通している電子温度計はだいたいサーミスタを使用しております。そのサーミスタも特性によって異なり、温度上昇とともに抵抗値が減少するものをNTC (Negative Temperature Coefficient)サーミスタ、逆に抵抗値が増大するものをPTC (Positive Temperature Coefficient) サーミスタ、一定の温度を境に抵抗値が急激に減少するCTR (Critical Temperature Resistor) サーミスタの3種類があります。このうち、温度測定でよく使われるのはNTCサーミスタで、電子体温計もそちらが使われています。NTCサーミスタの使用温度範囲は-50~500℃程度で、精度は体温計で使われているものだと±0.1℃になります。
安価で、生体温度における感度が高いのが特徴です。全体の装置もコンパクトにすることができます。
サーミスタとは?温度センサの違いや特長をわかりやすく解説 - ニッポー
〇熱電対
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異なる2種類の金属線を接続して一つの回路を作ると、その接点の温度差によって電圧(熱起電力)が発生します。これを「ゼーベック効果」と呼びます。熱電対では温度によって変化する熱起電力を利用して、温度を測定します。
ちなみに二種類の金属線が接続した回路に電流を流すと、片側が冷やされ、もう一方が温まります。これはペルチェ効果と呼ばれ、電流とともに熱が輸送されるために発生します。よく言われるペルチェ素子はその効果を活かした電子部品で、パソコンのCPU冷却や、実験機器の加温・冷却装置などに用いられます。
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話を熱電対に戻します。熱電対は素材の組み合わせによって複数の種類があり、それぞれの測定温度範囲が異なります。例えば最も流通量が多いK型の熱電対は使用温度範囲が-200~1200℃と幅広く、工業において炉内温度の管理等に用いられます。我々が扱っている製品だと、低温測定向きのT型があります。
熱電対は応答が早く、プローブの加工がしやすいのが特徴です。ただ、発生する電圧が微弱なために電磁波などのノイズを受けやすいこと、プローブとは反対側の接点で温度保証(温度を一定にする)をする必要があります。
製品例
体温保持装置
CWE TC-1000 温度コントローラ 小動物体温保持装置
こちらの機器は動物の手術において体温を保持するために使います。温度プローブを動物の体内に挿入して、体温によるフィードバック調整を行うことができます。プローブはサーミスタと熱電対双方に対応しております。
Bioseb BIO-TK8851 小動物用温度計
こちらは熱電対プローブに対応した温度計です。片手で持てるのが特徴です。
Physitemp | BRC バイオリサーチセンター 商品情報
こちらも熱電対温度計とプローブです。ケーブルが柔らかくて扱いやすいものです。
ADInstruments PowerLab ポッド
eDAQ USB isoPod - 小型測定器
サーミスタ・熱電対式の測定機器です。動物の体温のほか、運動時の皮膚温度モニタリング等にも使えます。
それぞれの特性と実験のプロセスを考えて、相性の良いものを選ぶと良いですね。