見出し画像

組織透明化手法 CLARITYとは

CLARITY (Clear Lipid-exchanged Anatomically Rigid Imaging compatible Tissue hYdrogel) とは、、、

「アクリルアミドベース」とは、化学物質の一種です。アクリルアミドベースは、さまざまな製品や材料の作成に使用されます。
例え話で説明すると、アクリルアミドベースは料理の材料のようなものです。たとえば、ケーキを作るのに必要な小麦粉や砂糖のような役割を果たします。アクリルアミドベースがあることで、製品や材料がより良くなったり、特定の性質を持つようになったりするのです。
具体例を挙げると、アクリルアミドベースは、接着剤や塗料の中に含まれています。これによって、接着剤や塗料がしっかりと物にくっついたり、効果的に塗装されたりするのです。
つまり、「アクリルアミドベース」は、あるオブジェクトを作るために使われる材料の一種だと言えます。のハイドロゲルを使い組織を透明化する技術です。CLARITYは脳や臓器などの組織を丸ごと透明なハイブリッドゲルに変換することで可視光および蛍光マーカーのアクセスを向上します。それにより、分子ラベリングの技術と組み合わせて丸ごとの臓器内のタンパク質や核酸の分布を高精度にイメージングすることが可能です。この新技術は2013年にスタンフォード大学のKwanghun Chung博士、Karl Deisseroth博士らによりNature誌に発表されました。

Structural and molecular interrogation of intact biological systems. Nature. 2013. 497. 332-337


組織透明化とは、、、

組織全体を透明化する技術の開発は、組織観察の常識を超える技術の発明でした。理化学研究所のグループが樹立したSca/e(1)やウイーン大学が発明した3DISCO(2)は世の中に透明化試薬を知らしめるきっかけとなった報告例です。マウス全脳の組織を特定の試薬に浸け込むことで丸ごと透明化し、組織全体の蛍光イメージングを成功させた事例は神経科学分野に鮮烈な印象を与えました。

組織と溶液の屈折率を調整 (透明化試薬)

このような透明化手法は、組織と溶液間の光の屈折率を同程度に調節することで視覚的に透明に見せています。このことから屈折率を調整した溶液の組織への浸潤が組織の透明度に深く関与していると考えられます。その組織の透明度を最大限確保できる可能性を見せているのが、2013年スタンフォード大学のグループが開発したCLARITY(3)と呼ばれる透明化手法です。

電気泳動法による脱脂 (CLARITY)


CLARITY法のメカニズム

1、ハイドロゲルモノマーの組織への浸潤

CLARITY法では、前処理として、組織内部のタンパク質や核酸分布の保持のためにアクリルアミドベースのハイドロゲル溶液を使用します。

ハイドロゲルモノマー溶液:4%PFA, 4%アクリルアミド,0.25% VA-044(重合開始剤,Wako)

上記の溶液を動物の灌流固定の際に使用します。組織内部のタンパク質をアクリルアミドとPFAとで共有結合します(Fig. 1)。PFAがタンパク質とアクリルアミドをアルデヒド結合で架橋します。


2、アクリルアミドベースによる組織内部のタンパク質固定

ハイドロゲルモノマー溶液に漬け込んだ組織の温度を37℃まで上昇させて組織内部のタンパク質等を固定するために重合させます。これによってアクリルアミド重合によって形成された網目構造にタンパク質が強固に固定されます(Fig. 2)。通常のホルマリン固定と比べ、タンパク質が強く保持されているため、後の分子ラベリング技術へ応用できます。


3、SDS-PAGEを利用する組織透明化

ハイドロゲルモノマー溶液を使用して固定化させた組織(ゲル化組織)をSDS-PAGEの原理を利用して脱脂を行ないます。通常、SDS-PAGEであればタンパク質等も移動してしまいますが、ゲル化によってタンパク質は保持され、SDSのミセルによって細胞膜や脂肪由来の脂質だけが洗浄されます(Fig. 3)。脂肪成分が除去された組織は本来の色味を失い、透明な組織へ生まれ変わります。さらに組織の屈折率に合わせた高屈折率試薬に浸潤させれば、より透明度の高いクリアな組織が完成します。


バイオリサーチセンター 商品情報



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?