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CAEBV研究の現況

今回は慢性活動性EBウィルス感染症(CAEBV)について語ります。

CAEBVは希少疾患の一つです。
原因となるEBウィルスはヒトにおいて成人するまでほぼ確実に感染しますが、大抵はB細胞というリンパ球に潜み、一生を通して何の症状も起こすことはありません。
そのEBウィルスがごくまれにT細胞やNK細胞に感染し、発症することがあり、これをCAEBVと呼びます。今回話題になったのが、CAEBVの治療薬候補としてルキソリチニブの第II相試験です。

JAK1/2 Inhibitor Ruxolitinib for the Treatment of Systemic Chronic Active Epstein-Barr Virus Disease: A Phase II Study | Blood Neoplasia | American Society of Hematology

CAEBVはこれまで有効な治療薬がなく、同種造血幹細胞移植が行われていましたので、こちらの治験結果は大きなニュースです。

Chat GPTで要約したところ、こんな感じになります:

タイトル:
JAK1/2阻害薬ルキソリチニブを用いた慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症の治療:第II相試験
背景:
慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症 (Systemic Chronic Active Epstein-Barr Virus Disease, sCAEBV) は、EBV感染T細胞またはNK細胞が原因となる希少かつ難治性のリンパ性腫瘍疾患で、全身性炎症を特徴とする。唯一の根治療法は同種造血幹細胞移植 (allo-HSCT) だが、移植前の病勢活性化は予後を悪化させる要因となっている。
目的:
JAK1/2阻害薬であるルキソリチニブの、sCAEBVに対する有効性と安全性を評価する第II相、多施設共同、オープンラベル試験を実施。
方法:
9名の患者(13~64歳)が対象。
ルキソリチニブは1日2回、最大8週間投与(必要に応じて16週間延長)。
完全寛解 (CR) と部分寛解 (PR) を病勢活性の完全消失または部分的改善と定義。
主な評価項目は投与開始後56日目または早期終了時のCR率。


結果:CR率は22.2%(2/9例)。
PRを含む全体の反応率(CR+PR)は33.3%。
7名がallo-HSCTを受け、そのうち5名がCR達成。
投与中に病勢の進行は観察されず、副作用は軽度から中等度で管理可能。


考察:
ルキソリチニブはsCAEBVに対する有望な治療選択肢であり、特にallo-HSCT前の病勢管理に有効と考えられる。EBV-DNA量には明確な変化は見られず、炎症性サイトカインの抑制が主要な作用機序と推測される。治療後の生活の質向上や入院期間短縮にも寄与した。
結論:
ルキソリチニブは病勢活性を抑制し、allo-HSCTの成功率を高める可能性が示唆された。さらなる研究が必要。

本試験の限界点はOpen label試験かつ対照群がいないことで、従来の化学療法と比較した優位性が論文の中だけではわかりません。それでも一つでも選択肢が増えるのは良いことだと思います。今後、さらなる有力候補が出た際のベンチマークにもなり得るのではないでしょうか?

さて、論文を読んで、CAEBVはどのようにして感染・発症するのかが疑問に出ました。
CAEBV全般については下記の記事があります。

<905688E42E736D64>

EBVはB細胞に特異的なCD21という抗原を介して感染しますが、このCD21はT細胞にもわずかに発現しているそうです。それに加えてNK細胞もB細胞との接触によってCD21が発現することもあり、これらの細胞からEBVが感染するのではないかと考えられます。感染、そして発症する確率がどれくらいあるのか、感染予防・感染後の防衛機構が気になるところです。

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