第6話 もがいてもがいて掴んだものは
第6話
現在ほぼ無一文の和彦は、
餃子定食を食べながら自分
の人生を狂わせた1人の男
に回想を巡らせる。
一時は大富豪にまで成り上がった俺が、今じゃこのザマだ。
元はと言えばあの男が、俺の人生のすべてを狂わせた・・・。
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!
まぶしい光の向こう側で、
話し声が聞こえる。
・・・影がつぶやく。
『ああ、またか』
『もう和彦は無理でしょうね
・・・武彦にしましょうか』
遠くで、誰かが話している。
なんだ、なにがあった・・・?
あのアルパカはどこへ行った?・?
光の向こうで話が続く。
『我々は和彦に頼りすぎたのだ
・・・みろ、今いるアルパカを
・・・どのアルパカも、もう
我々が見つけてきたものとは
違う・・・もう、ダメなんだ』
??
何の話だ?和彦は耳をすませる。
『和彦は、もうダメだ。
しかし、和彦がいないと
あの品種は交配できない
というのに。
幻のアルパカ種・・・和彦。』
『アルパカのひき肉で作る餃子』
!
『もう、和彦の記憶をいじることは
難しいと思います。彼は自分が人間
だと思い込んでいます・・・』
?
+<。>_+*++__?
耳を疑う。
眩しい。
視線を下に下げると、
柔らかな羽毛がある。
!!!
光の指す方へ眼を向ける。
バサバサと動くまつげに気付く。
となりであのアルパカがじっと
こちらを見つめている・・・
その名札に気付く。
【クリボー】
背筋が凍る感じがする。
・・・俺が、アルパカなのか?
『く・クリボー・・・にげろ』
───────
・・・
『おい、リス坊、聞いてるのか!』
クリボーこと武彦の声で我に返る。
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はっ!
『おいおい、たのむぜリス坊、
なんなんそれ人生かかってる
んやで?
・・・
H-1グランプリ。獲れたら
史上最年少だぜ!
オマエ、これにコンビ継続
賭けるっていってたんだろ
本気なんだろうな・・・
そのためにわざわざこんな
面倒なアルパカ漫才を用意
したんだからな
ダメだったら覚悟しろよ。』
武彦は、ワタシとの関係に
行き詰まりを感じている。
ワタシも、これが最後の
漫才だとおもっている。
この舞台で、アルパカを刻む。
観客の髪の毛一本残らず
かきむしり、ひきちぎり、
記憶に残す。
和彦の目は濡れたように
ひかり、まつげはまるで
アルパカのそれのようだった。
この漫才でだれも見たことのない
世界に観客を連れていく。
和彦の鼻息は段々と荒くなるのだった。
『よし・もう一度ツカミの練習だ』
和彦はうなずき、おもむろに
両手をひろげた。
ばっさばっさ。
ばっさばっさ。
『なんなん、それアルパカや~ん』
ばっさばっさ。
ばっさばっさ。
『それ、まつげの長いアルパカや~ん』
・・・
。。。
和彦と武彦は、お互いの
顔をじっと見つめている
・・・そしておむむろに
ふりかえり、
『う~~あほ!』
・・・
『よし。いくぞ。』
つづく。