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性格って、なに?

こんにちは。はじめまして。Bravo! Labで、行動支援&改善のアドバイスを担当する、みきです。

動物の行動とトレーニングのコンサルタントで、BAWedu株式会社の代表をしています。

主に動物に関わるプロフェッショナルの方に、セミナーやオンラインコース、プライベートコンサルテーションを通じて、世界基準の最新の動物のケアやトレーニングに関する情報、行動変化の科学と技術、倫理、実践的スキルをお伝えしています。

「動物に教える人なのに、なぜ人を教えるの?教えられないでしょ?」
「動物と人は違うでしょう?」
と思われる方もいらっしゃると思いますが、私たち人も、動物で、行動変化の法則は、動物種問わず同じです。

言葉の「意味」に行動が影響を受けるのは、言語の動物である人ならではですが、行動が起こり、繰り返されるしくみ、新しい行動やスキルを習得するプロセスは、動物種問わず同じです。

大人も、子どもも、他の動物種も同じです。

ABAって、なに?

「行動分析学」は、実験環境の中で行動変化の法則やしくみを見つけ出すことを目的とした、行動と環境の関係性を研究する学問で、「応用行動分析学 ABA」は、行動分析学が発見した、行動変化の法則としくみを、実際の生活の中の行動に応用して、人や動物の生活を向上させようとする行動工学です。

応用行動分析学 ABAは、自閉症や言語を持たない障がいを抱える子どもたちの生活向上に役立ってきました。

例えば、長い間決まった席に、静かに座り続けることが難しいと、周囲の子どもたちの学びの妨げとなり、教室で授業を受けることができなくなります。教育を受けるチャンスが減り、その子どもの生活は低下することになります。

その子どもが抱えている障がいは、変えることができません。

行動を障がいのせいにすれば、その子どもを排除するか、周囲の子どもたちや指導者が、問題となっている行動を受け入れるしかなく、それぞれが持つ権利が侵害されることになり、誰かの生活が低下します。

ABAのアプローチ

応用行動分析学 ABAは、行動に影響を与えている環境を操作することで、望ましくない行動を、望ましい行動に置き替え、その子どもと周囲の人の生活を向上させます。

教室で、イスを揺らす、教室を駆け回るといった行動が起きているのであれば、行動と環境を観察して、その行動が起きるきっかけと、その行動で得ていることを、見つけ出します。

そうした行動は、刺激に対する不快感や刺激の不足を低減することに役立っていることがよくあります。

その子どもが、何に不快や苦痛を感じているのかを調べ、その原因となっている刺激や環境を取り除く、もしくは、小さくするための工夫をする。

刺激の不足が苦痛であれば、例えば、体の一部を動かして、刺激を獲得できるもの、例えば、数珠状のネックレスやブレスレット、外側が回転するようにできている指輪などを提供します。

そうしたものを触るという行動をすることと、感覚的刺激を得ることで、不快に感じる刺激や環境から注目を逸らしたり、刺激の不足を低減できることがあります。

ネックレスやブレスレット、指輪を触ることは、イスを揺らし続けたり、教室を駆け回ったりするよりも、望ましい行動で、周囲の子どもや教師も、受け入れられる行動です。

望ましくない行動を必要とさせている環境的要素を取り除く。望ましくない行動の代わりに実行する望ましい行動、もしくは、周囲が受け入れられる行動を教える。

その両方か、いずれか一方を実現することで、望ましくない行動が起こる可能性は、少なくなります。

現実的な目標を設定し、環境を変え、行動を変えることで、行動をする人や動物も、その周囲にいる人や動物も、より安全に、より快適に暮らすことができます

応用行動分析学 ABAでは、実際に起きていることと変えられるもの、解決策にフォーカスします。

性格って、なに?

多くの人が、行動の理由を、その人の性格だといいますが、性格とは、なんでしようか?

答えられますか?

性格が行動の理由だと思っている人は、答えられないでしょう。

答えられたら、性格が行動の理由でないことがわかるからです。

性格というのは、行動の理由ではなく、複数の行動をひとくくりにして、そこに付けた名前で、行動のカテゴリー、ラベル(レッテル)です。

例えば、「他者からの提案を断り、自分の考えで行動する」「新しい情報や選択を拒否し、それまでのやり方を続ける」といった行動を見た人は、それを「頑固」といいます。

「頑固」は、「他者からの提案を断り、自分の考えで行動する」「新しい情報や選択を拒否し、それまでのやり方を続ける」という行動が含まれる、行動のカテゴリーの名前です。行動傾向につけられた名前で、ラベル(レッテル)です。

「頑固」というのは、「他者からの提案を断り、自分の考えで行動する」「新しい情報や選択を拒否し、それまでのやり方を続ける」といった行動を観察した人が、持った印象や感じたこと、考えです。

しかし、行動の観察者の印象、感じたこと、考えだったものが、いつの間にか、「行動の理由」にすり替わります。

行動を見て、「頑固」だと感じただけなのに「●●するのは、頑固だからだ」と、自分が思ったことが、行動の理由だといいます。

自分が持った印象や感想を、行動の理由にすり替えてしまっていること、行動を見て思ったことなのに、それを行動の理由にしているという事実に気づきません。

おもしろいですよね。

「性格」と呼ばれるものは、行動を単に言い換えたに過ぎませんが、言語から考えをはじめる、私たち人は、言い換えられると、「なるほど」と思ってしまいます。

そして、そのことについてわかったような気持ちになります。

行動の理由は、たくさん考えられます。

調べてみなければ、どれが行動の本当の理由かはわかりません。

でも、行動について、よくわかっていない人は、自分が行動について、よくわかっていないことが、よくわかっていないので、「性格」といった自分の頭に浮かんだことを、行動の理由だと断定します。

行動の理由

行動が繰り返されるのは、性格のせいではありません。その行動によって、望む結果を獲得できるからです。

「他者からの提案を断り、自分の考えで行動する」のも「新しい情報や選択を拒否し、それまでのやり方を続ける」のも、その行動によって、その人が望む結果を獲得できるからです。「頑固」だからではありません。そうした行動を「頑固」という名前を付けているだけです。

行動の理由は、行動に続いて起きる出来事です。

あなたが、もし、この解説を読んでも、「いや。行動は、その人がそういう性格だからするんだ」と思うのであれば、それは、あなたが「頑固」だからではありません。

それは、「行動の理由は、行動がもたらす結果である」という事実よりも、「行動の理由は、性格である」と考える方が、あなたにとって都合がよく、望む結果を獲得できるからです。

自分の考えを変えることや、新しいことを学ぶ努力をしなくて済む、今まで自分が考えてきたことやしてきたこと、言ってきたことを否定しないで済むといったことが、「性格が行動の理由である」と考いう考えを捨てられず、主張し続ける理由です。

ABA 応用行動分析学は、「愛情を学習者の役に立つ形に変換するための科学」

私は、ABA 応用行動分析学は、「愛情を学習者の役に立つ形に変換するための科学」だと思っています。

学習者を決めつけるのではなく、学習者が経験していること、直面している問題を客観的に理解し、学習者の成功の妨げとなっているものを見つけ出し、学習者が自分自身の行動をうまく使って、対処できるように手伝います。

行動は、学習者が置かれている環境、自分が選択し、学習者に提供している環境が、いいかどうかを判断するための指標です。

望ましい行動が起きていれば、適切な環境を提供できているということ。

望ましくない行動が起きるようであれば、それは、望ましくない環境の中に、学習者は置かれていることを意味し、環境を改善するべきであるというフィードバックです。

望ましくない行動をやりやすく、望ましい行動をやりにくくしている環境的要素を見つけ出し、改善する必要があります。

教え手となる私たちは、学習者が置かれる環境の選択者であり、提供者であり、自分自身がその環境の一部でもあります。

私たちの選択と行動は、学習者の行動に影響を与えます。

行動改善とは、環境改善であり、環境を見直し、改善するというのは、教え手となる、私たち自身の選択や行動を見直し、改善するということです

残念ながら、学習者に望ましい行動を実行させようとしてしているみなさんの行動が、望ましい行動が起きることにまったく貢献していなかったり、逆に望ましい行動が起きることの妨げになっていることは、よくあります。

具体的な例については、また別の機会に解説したいと思います。

この記事は、行動の役割を「電気のスイッチを押す行動」を使って解説したものです。よかったら、読んでみてください。

一緒に学び続けていきましょう!

みき

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