寒い寒い北のクラシックの罠

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

雨、晴れ、吹雪、このままレースは続行されるか?0℃近い寒さと目まぐるしく変わる天候の中、レースはゴールへ進んで行く。

寒さの中、レインジャケットの中にも防水ジャージを着る選手が多く、脱いでは着て、着ては脱いでを繰り返す。選手の口からは白い息が出続ける。そのスピードは例年よりも遅く感じるスピードだった。気温が落ちると、体が動かなくなる。そして、雨でブレーキングが遅れる分、いつもより強く握りこんでしまい、腕や僧帽筋も疲れやすくなる。

私は、ベルギー、オランダのレースを数多く出てきたが、レースよりも寒さとの戦いがレース前から始まっている。何を着るのか、オイルは何をどこに塗るのか。ヨーロッパ人の平均体温はアジア人よりも高く、デンマーク人に至っては、37.2℃の平熱の選手もいた。体温が0.5℃でも変われば、体感温度は大きく変わる。私は36.1℃ほどで、体脂肪率も5%ほどしかなかたので、寒さは大きく成績に影響があった。

今では当たり前になってきた、GABBAを始めとする防水ジャージは、数年前からプロ選手も自分で買ってまで使うアイテムになっている。それは、寒さがレースを大きく左右することを知っているからだ。寒さ対策には

足:ウォームアップオイル、レッグウォーマー、

上半身:ウォームアップオイル(背中、お尻、お腹、腕)、厚手インナー、半袖、アームウォーマー、防水ジャージ、レインジャケット

と、上半身の着込みが多い。それは筋肉の動きが下半身ほどではなく、熱をあまり作ることができないからだ。だからこそ、レース中に中のジャージが濡れてしまうと、取り返しがつかないほど寒くなるし、レインジャージも中に空気が入るタイプの物は、常に風が動くので寒さ倍増だ。

TV解説の新城選手にも質問した

Q.「北のクラシックで道が狭くなるポイントで、集団前方でコーナーに入るために見えている1番大事なポイントは何ですか?」

A.レースは常に選手が動かしているので、集団の動きに合わせて早すぎず遅すぎないタイミングで前に出る。ほぼすべての選手が試走してコースを知っているので、自分自信で感じて動くしかない。

わかっていても動けない選手もいただろう。寒さ、晴れた日と同じようなコーナースピードでレースは進まない中、ストップ&goを繰り返した選手たちは「コート・ド・ラ・ルドゥット」、「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」でも動きは見られなかった。

体力の消耗と、最後のペースアップに準備し、早めの攻撃がゴールまで持たないであろう心理が、ある意味消極的に見えたレースともいえよう。しかし、勝負所で動けた選手の数を見ても、集団の85%の選手にとってはついていくだけでも必死な展開だったと予想される。

わかっていても動けない=位置取りと上りのインターバル→足の消耗→最終トップグループの選手のみ頭一つ抜け出してた。

選手にとってこの寒さ&雨はレース展開を、大きく動かす要因になることを改めて感じた。まだまだ、ジロ・デ・イタリアまでは、雪の可能性がなくならないレース。寒さに強い体を手に入れるのもトレーニングの内なのかもしれない。

レース展開、天候、風、ライバル、重要ポイントの抑え

全てがうまくいかないと、なかなか最前線で優勝争いには加われない。


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