ガリレオの式、湯川先生の頭の中 その4
いよいよクライマックスだ。前項で入射成分のスカラーポテンシャルを得た。ここでは散乱成分と球の内部のスカラーポテンシャルを考える。前述の通りスカラーポテンシャルは(56)で与えられる。
内部と散乱のスカラーポテンシャル
$${χ_l}$$は原点で発散するので球の内部で用いるのは適切ではない。よって球の内部では$${c'_{3,l}}$$=1、$${c'_{4,l}}$$=0とする。
散乱成分では無限遠方で電場、磁場を0にしたい。そこでRicatti-Bessel関数とRicatti-Neumann関数の一次結合を$${c'_{3,l}}$$=1、$${c'_{4,l}}$$=±1としてRicatti-Hankel関数とする。
$${ζ^{(1)}_{l}}$$は第1種Ricatti-Hankel関数、$${ζ^{(2)}_{l}}$$は第2種Ricatti-Hankel関数である。時間振動をexp(-iωt)として空間方向を正にしているのでここでは第1種Ricatti-Hankel関数を用いることにする。以下では$${ζ_{l}}$$は第1種Ricatti-Hankel関数とする。
入射波でm=1、l≧1としている。また$${c_{1,m}}$$,$${c_{2,m}}$$を入射波にならい球の内部と散乱成分のスカラーポテンシャルを以下とする。
境界条件
球の表面r=aで電場と磁場の接線方向であるθ、φ方向の成分が球の内外で連続であるとする。
前述の以下の(27)(28)(30)(31)
と(93)を用いて電場と磁場θ、φ方向の成分が球の内外で連続であるとすると
がr=aで連続である。よって以下が成り立てばよい。
以下の$${ψ'_{l}()}$$,$${ζ'_{l}()}$$は引数での微分とする。
(94)(79)(89)(91)より
(95)(87)(90)(92)より
(96)(79)(89)(91)より
(97)(87)(90)(92)より
ここで
とすると(98)(99)(100)(101)は以下となる。
さらに
とし、 (57)より
であるので、 (103)は以下となる。
未知数$${a_{l}}$$, $${b_{l}}$$, $${c_{l}}$$, $${d_{l}}$$を求める連立一次方程式に帰着された。 (106)を解いて
になる。これで材料は揃った。
球の内部の電磁波
前述の式および$${c_{l}}$$, $${d_{l}}$$を用いて球の内部の電磁波を決定する。表記を簡単にするため、Legendre陪関数に関連して以下を定義する。
(26)(89)(102)より
(27)(89)(90)(102)(111)より
(28)(89)(90)(102)(111)より
(29)(90)(102)より
(30)(89)(90)(102)(111)より
(31)(89)(90)(102)(111)より
$${c_{l}}$$, $${d_{l}}$$は(109)(110)を参照。
計算はこれで終わり。湯川先生の頭の中でここまで14秒くらいだろう。
その5に続く