ガリレオの式、湯川先生の頭の中 その1
Netflixでドラマのガリレオが配信されている。ついつい観てしまう。シーズン1はもう20年近く前になるので若い人はリアルタイムで観ていないだろうし、そもそもガリレオを知らないのかもしれない。年配者向けのコンテンツになりつつあるのかも。
原作小説にはないが、ドラマでは謎が解けそうになると湯川先生が所構わず式を書きなぐるシーンがある。あれは考えを整理するためにやっているらしい。細切れでしか見えないのでどんな計算なのかよく分からない。
何をしているのか気になるが殆ど推測できない。多分こうなのではと推測できそうなのがシーズン2の第3話、大島優子さんがゲストの回、心聴る(きこえる)の謎解き。
特定の人にだけ聞こえる音(幻聴)の原因を調べているシーン。
岸谷 「幻聴の原因、特殊状況下における正常な反応」
湯川 「特殊状況下における正常な反応とは何のことだ?」
岸谷 「断眠、感覚遮断、強電磁場」
湯川 「強電磁場…」
湯川先生が何か思いついてテーマ音楽が流れ、地面に式を書き始める。
湯川先生は強電磁場と聞いて電磁波か!と思いついたと思われる。湯川先生の頭の中の動きを想像してみたい。ドラマの演出とは同じにならないが出来るだけ省略せずに書いてみる。
まずは電磁気のMaxwell方程式から波動方程式を導出する。
Maxwell方程式
誘電率をε、電導率をσ、真空での光速をc、振動をexp(-iωt)、角速度ωは一定として以下を定義する。
(1)を用いてMaxwell方程式の回転の式を表すと以下のようになる。Eが電場、Hが磁場のベクトルである。
人間の頭を球で近似したいので、ここでは極座標を用いる。EとHをペアとして直交する二つのペアを以下のように定義する。右下の添え字は方向を表す。二つのペアで任意の電場、磁場を表すとする。
電気波
(2)の電場のθ方向は
同様にφ方向は
となる。
(2)の磁場のθ方向に着目して
となる。
(2)の磁場のr方向に着目して
である。
として(7)に代入すれば
となり都合がよい。そこでスカラーポテンシャルを用いて
とすると(8)は
となる。
(4) (9)より
(5) (9)より
(10) (11)を(2)の電場のr方向
に代入して
となる。
(6) (11) (12)より
となり、スカラーポテンシャルはHelmholtz方程式(波動方程式)を満たす。
(13)より
であるので、 (12)は
となる。
磁気波
(2)の磁場のθ方向は
同様にφ方向は
となる。
(2)の電場のθ方向に着目して
となる。
(2)の電場のr方向に着目して
である。
として(18)に代入すれば
となり都合がよい。そこでスカラーポテンシャルを用いて
とすると(19)は
となる。
(15) (20)より
(16) (20)より
(21) (22)を(2)の磁場のr方向
に代入して
となる。
(17) (22) (23)より
となり、スカラーポテンシャルはHelmholtz方程式(波動方程式)を満たす。
(24)より
であるので(23)は
となる。
電場・磁場の成分
(9)(10)(11)(14)(20)(21)(22)(25)より二つのスカラーポテンシャルを用いて電場、磁場の各成分は以下のように表せる。
湯川先生の頭の中でここまで3秒くらいだろう。
その2に続く