GIFT特別版「僕の夢」を語る

 GIFTを東京ドームで観た時、羽生くんの物語を半分も解釈できなかった。GIFTの感想は過去のnoteに何回か書いてますが、スケートや演出について書けても、物語を掘り下げるよーな事は書けなかった。夢を叶える理想の自分と、夢を追いかける現実の自分の葛藤を表現している。そう捉えているけど「これどんな意味なの?」と思う場面がいくつもあり、全体的に解像度が低い感じ。
 ドームという会場で、耳で物語を聴き取るのは難しい。読書なら何度も読み返して次の章に進めるけど、ドームでは聴き返せない。?と思った所が積み重なると解像度が下がるのだ。
 こう書くと東京ドーム公演が良くなかったように聞こえるかもしれない。が、そーではない。ロンカプは北京オリンピック以上に緊張したし、阿修羅ちゃんはライブのよーに興奮した。東京フィルハーモニーの奏でるSEIMEIは和笛と和太鼓の音にゾクッとした。東京ドームは音響が良くないと言われてるのに、そんな事は全く感じなかった。
 東京フィルハーモニー呼んで、音ズレしないよう音響を整えて、音楽監督に武部さん、演出にMIKIKO先生やRhizomatiksさんが加わり、最強の布陣を敷いたGIFTはアイスショーの概念を覆したと思う。参戦できた事は幸甚の極み。なんですが、羽生くんの語る物語を解釈するには時間を要するんです。少なくとも私には少しずつ掘り下げる必要があるのです。
 前振りが長くなりましたが、GIFT特別版で語られる「僕の夢」について掘り下げたいと思います。以下GIFTより抜粋↓↓

1番あったかくなれる場所を見つけた
それは僕の夢になった
いつか叶うのかな?
きっと叶うよ
心の中から聞こえてくる
どうしてそんな事言えるの?
だって君は叶えたいんでしょ?
うん、僕は叶えたい
だったら絶対に叶うよ
君はできない事が嫌いだから
そう言って心の中から聞こえてきた
不思議な声は消えて行った

 ドームで最初にこれを聞いた時、僕の夢は「表彰台のてっぺん」だと思ったんです。でも、それはただの表彰台じゃない。羽生くんの場合はオリンピックの表彰台。小さい頃からオリンピック優勝を口にしていたのだから、そう解釈するのが妥当ですよね?やがてその夢がオリンピック連覇という大きな夢になり、それを成し遂げた後は4Aが夢になった。羽生くんの歴史を知る人ならここまでの解釈はだいたい一致するはず。
 で、ここからは私の解釈なので一致するか分かりません。違うなーと思ったら優しくスルーして下さい。
 北京オリンピックで挑戦した4Aは成功しなかった。4Aを跳んだ記録と記憶を残し、オリンピックに爪痕を残す事はできたけど、夢は成し遂げられなかった。GIFTの二部ではその夢と現実に葛藤する姿が描かれていると思うのです。それは単純に4Aへの葛藤ではなく、求められる羽生結弦と現実の羽生結弦の乖離に苦しむ姿が描かれてると思うんです。以下抜粋。↓↓

君に手を伸ばす
君になりたいんだ
こんな何もできない僕でも君となら

 この場面、双方の差し出した手は重なりません。それは夢と現実は重ならなかった事を表してると思うんです。その後、仮面を被った羽生くんがモニターに映されますが、これは求められる羽生結弦、仮面の下に現実の羽生結弦、乖離した2つの自我を表してると思うのです。でも、仮面は砕けた。その後に滑ったphantomでは最後に仮面を外してますよね?求められる羽生結弦になれなかった、夢を成し遂げられなかった自分を晒しているのかな?と思うのです。その後は黒のロングコートで彷徨う羽生くんが描かれているのですが、その時の言葉がこれ。以下抜粋↓↓

時間はもう無いよ
もうお別れの時間だよ
ずっと一緒にはいられないんだ
永遠なんてない
僕は、君の「夢」だから
夢は覚めなきゃ
行ってらっしゃい

繋がっていた鎖は
粉々に散って
自由になった
鎖が外れた先に何があるの
何一つ残ってない
「夢」は終わった

 競技を離れる、それは競技の縛りから解放されると同時に競技者としての4A成功が夢に終わるとゆー意味で、そーゆう状況でのプロ転向は思い描くプロ転向ではなかった。北京オリンピックの後はプロとしての展望が描けなかったのかな?と思うのです。
 羽生くんは、本当はもっと早い段階でプロ転向したかったと思うんです。2021年の全日本の前、4A降りれたら満足みたいな事を言ってましたよね?降りれたら北京を待たずにプロになった気がするんです。でも、あの時の4Aはダウングレードで優勝した。オリンピック一発内定で、行くしかない状況になった。オリンピックの結果は思い描くものではなかったけど、4A挑戦はどの選手よりも記憶に残る挑戦だった。オリンピックに呼ばれたんだと思う。
 オリンピック後、去就に注目が集まる中、FaOI
2022の出演が発表され、チケット争奪戦は熾烈を極めました。あの年はアーティストさんも素敵で、どの公演も盛り上がりましたよね。私の妄想ですが、あのFaOIを通してプロとしての展望が見えたのかな?と思ってます。静岡大楽では覚悟は決まってた気がします。
 で、GIFTに戻りますが、いつか終わる夢を滑った後、羽生くんが再び語ります。↓↓

それでも星達がキラキラと輝いて照らしてくれた
「頑張れ、大丈夫だよ」
太陽の光を浴びた月も光っていた
その凛とした光はとてもカッコよかった
僕の行く道を光で導いてくれた
「ちゃんと光を受け取れるよ」
その道には花が咲いていた
まっすぐ生きている姿があった
「私たちがいるよ」
少しだけ月の道を進むと前から風が吹いてくる
その風はとても優しく温かかった
「ずっとあなたは、向かってきた」
「そんなあなたを私達は知ってるよ」
いつのまにか感じなくなっていた皆んながそこには居た
その事に気が付けなかった
でも、僕は1人だ
どうしても1人だ
終わってしまった大切なもの
消えてしまった大切なもの
どこにもない大切なもの
君がいればなんだってできる気がしていた
毎日苦しい事があって、楽しい事があって
笑って、怒って、泣いて、
寂しい事も悲しい事もあって
でもずっと当たり前のようにあった
ずっと側に居てくれた大切なもの
なんだって頑張ってきた
ずっと独りだった?
違うよ
独りを選んできた
でも、ずっとずっと一緒にいたんだ
大切にしてきたんだ
でもいつのまにか大切にしなくなった
できない自分を君のせいにして
悲しみだけをぶつけて、傷つけて
苦しいのは僕じゃなかった
苦しいのは僕だけじゃなかった
苦しいのは独りになってしまう事
共に歩めなくなってしまう事
いつも共に居たかった
これからも共に居たかった
僕は独りだ
「独りじゃない」
君の声が聞こえたような気がした
独りになんかさせない
ずっとずっと忘れないで
淋しい気持ちに蓋をしないで
君の中の淋しいをちゃんと見てあげて
僕は知ってるよ君はいつも強い
けど今はいいんだよ
辛くて泣きそうになっていいんだよ
独りになって気が付けてんだ
独りになんかさせてくれやしない
皆んないる、こんなにいっぱい居る
星たちの光が一段と輝きながら1つになった
僕は知っている
ちゃんと受け取ろう
独りじゃない
「ただいま」
お帰りなさい僕の夢
皆んなからのGIFT

 羽生くんが最後に語る言葉をドームで聴いてましたが、ここは抽象的すぎて解釈仕切れなかった。フィギュアスケートにまた夢を見出した、それが「お帰りなさい」になるのかな?と思うのですが、その夢は今までのよーな優勝とか4Aのよーなものじゃないよね?ドームでは正直分かりませんでした。
 最近になって、競技に縛られない理想とするフィギュアスケートを極めたい、残していきたいとゆー事なのかな?と思うようになりましたが、それも言い切れるよーな確信はありません。で、私の結論は「分かるまで観つづける」です。そんな簡単に分かるはずないし、観つづけていれば毎回何かしらの発見があると思うので、これからも付いて行きます。プロアスリートでありアーティストでもある羽生結弦のスケートをこれからも楽しみにしています!


いいなと思ったら応援しよう!