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傷を愛せるか


自分の才能と努力と運と、それ以上に周りに恵まれて、僕は今まで高校大学それぞれ日本一に挑戦してきた。
僕が入った学校は、そういった主要大会に出場することが当たり前で、その中で優勝を勝ち取ろうとするチームだった。

学生時代を卒業し、社会人となった今、毎年この時期になると考える。
いくつものチーム、何人もの選手達が日本一になろうとする中、栄光に輝くのはたったひとつのチームしかない。
何回戦まで進もうが、ベスト4、準優勝の結果を残そうが、優勝チーム以外は、その他敗者という大きなくくりの中に入れられるだけだ。
「努力が報われるとは限らない」とよく言われる。ほとんどの人間は優勝を経験できない。たったひとつのチームしか報われない。

夏は暑く、冬は寒い。朝は早いし、家に着くのは夜遅い。練習はきつい。いつも体のどこかが痛い。いくら練習しても上には上が居続ける。なら練習が足りないと言うけど、努力量も才能の一つなのを分かってない。常にプレッシャーが纏わりつく。大抵はそれは自分で背負ったものだ。でも、それから解放されるには、辞めるか、負けるか、勝ち終えるしかない。

花園や選手権に関わった全てのチームの選手達が同じような体験をしてきているんだと思う。それでも多くの選手は負ける。


なんて残酷な世界なんだ、と思う。
その過程に価値がある、一緒にここまできた仲間達がいる、負けから学べば失敗にはならない。人生長い目で見たらそれが正しい事はなんとなく分かってる。でもそんなので誤魔化せる程度の傷なら、ここまで本気になってなかったと思う。


僕は優勝を経験できなかった。それどころか、優勝がかかった大事な試合、局面で失敗してきた。花園も選手権も僕のせいで負けた。もしあの試合に勝ってたら、チームメイトの人生も変わってたかもしれない。口には出せないけど、本当に今でも申し訳ないと思っている。みんなごめん。



当たり前だが、学生時代は、いくら練習しても、試合に勝っても、お金を得る事はない。それでもあの瞬間に全てを賭けて生きる。多くの人間が敗者になる事を分かってるし、そもそも優勝がどんなものか経験していないから、本当にここまで捧げる価値があるのか知らない。それでもみんなが同じ方向を向いて、見返りを求めず熱くなれた。そして、そんな時間はもう二度と来ないのを僕は知っている。

でも、全てが僕の財産であることは間違いない。よく仲間内で、もし人生やり直せるならまたラグビーをやるか話す。僕を含めみんな二度とやらない、サークルに入ってのらりくらりワイワイ楽しい学生生活を送ると言う。けど、もし本当にやり直せても、またラグビーをやってみんなに出会うんだと思う。
後悔は無くならない。けど、それが1番の財産な様な気もする。優勝した事ないから、分からないけど。



学生時代は大会中だったために正月を実家で過ごせなかったのだが、ここ数年は実家で新年を迎えている。その度に考える。今までのこと、これからのこと。

社会人、プロになると学生時代のように無条件でプレーはできない。
チームにもいろんな人間がいる。みんなそれぞれ生活があって、それぞれラグビーに対して自分の中での位置付けがある。

それでも僕は強くなりたい。優勝してみたい。もう一度、余計なことに捉われず、ただラグビーに対してみんなで向き合ってみたい。
難しいと思う、てか無理だと思う。でも、僕はやってみたい。


そんな事を2024年の暮に考える。来年、26歳になるけど、まだまだ大人になれそうにない。そんな自分に感謝している。僕はこのままでいいと思う。


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