家族が癌になるということ その3
同居している父親(90歳・12月で91歳)の話である。この書き出しも3回目になるが、方向性が決まりそうで決まらない。かれこれ「癌の疑い」とかかりつけ医に指摘を受けてから2ヶ月が経過してしまった。時間がかかるものである。
地元の医大付属病院・呼吸器内科で詳しい検査を受け、結果(肺癌(腺癌・ステージⅠB)が伝えられたのが11月11日。その後、かかりつけ医の定期受診(13日)の際、報告と相談。医師からは「外科の話を聞いた方がいい。手術大丈夫だと思うよ」と励まされ、父親もその気になった。本人の意向が第一、という点では家族も一致しているので、再受診となった20日には手術という方向性が定まるのではないか、そう思っていた。
以下、長くなるが、20日の再受診の経過である。
まず、呼吸器内科を受診し、本人が手術希望である旨を伝える。そして、呼吸器内科医師からは、次のような懸念が伝えられた。
・転移は無いと判断しているが、心配な点がないわけではない。
・左肺の半分を取ることになる。体力の衰えが心配だ。
・「手術を前提に」ではなく、手術は外科の話を聞いて「可能なら」という話。
・身体の負担は「放射線治療」の方が「手術」より小さい。
これらをふまえながら、「外科の話を聞く(診察を受ける)」という方向性を確認し、心電図・肺活量の2つの検査をしたの後、呼吸器外科へと向かった。
呼吸器外科の医師は、これまでの経過を図解を含めながら明快に整理。手術をする場合の方法やリスクなど、わかりやすく、根拠を示しながら説明してくれた。
(手術をする場合)
・ステージⅠの場合、一般的には、手術をまず考える。
・左肺の上半分(肺全体の4分の1)を切り取ることになる。
・左肺の上葉は血管が多く肺の手術としては難しい手術である。
・想定手術時間は3~4時間。5~6時間かかるかも。(身体負担大きい)
・年齢だけで可否は判断できない。歩行、呼吸の状態(肺機能)なども判断材料。
肺の機能や癌の広がりも把握した上での実施となる。
・手術方法は「胸腔鏡手術」または「ロボット手術」(こちらが主流)
・一般的に10日位の入院。入院中もリハビリはするが、状態によっては、他院に転院してリハビリを継続するースもある。
(手術ができるかどうかの判断)
・検査結果によれば、5年前より肺の状況は悪くなっている(良いとは言えない)
・癌が血管に近い位置にある。更に詳しい検査(造影CT検査)をしたい。(医師が検査科に無理をお願いしてくれたので、この日に実施済み)
・これまでの検査や今日の検査も踏まえ、呼吸器外科の他の医師とも相談する。
その後、「ドクターとして」と前置きがあり、現時点の見解が示された。
・手術は非常にリスクが大きいと判断する。
・手術後、寝たきりになるリスクもある。呼吸の力がぐっと落ちる。
・日常生活で酸素が必要、という状態になることもある。
・60~70代でも身体的負担が大きい。今の歩行、呼吸の状態を考えると難しい。
・「どうしても手術をしたい!」という覚悟がないと、できない。
なるほど、、、、
かかりつけ医も含め、内科医の段階では「手術が可能」のような雰囲気があり、本人も家族もその気になっていたのだが、外科医の見解・意見を聞くと、本人も家族も「手術は難しい」という方向に気持ちが傾いてしまう。
そもそも、身体状況に異常があったわけではなく、「腺癌」の診断は受けたが、現在も本人はいたって元気である。食欲もあるし、90歳なりの歩行や屋外での作業もできている。その様子を見ていると、手術や放射線で身体に負担をかけるより、自然に任せて日常を過ごす方が幸せなのではないか、そんなことも考えてしまう。
いずれにしても、もう一度、呼吸器外科を受診し、外科医内での検討や・検査検査をふまえ、本人・家族の意向も伝えながら、方向性を決めていくことになる。
受診日(12月4日)まで約10日。本人・家族の逡巡は続いていく。