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カプサイシンには抗えない
唐辛子がもりもりと入った鍋を食べた。
私はよくワンパンペペロンチーノ(フライパンひとつで作るパスタの事だ)を作るのだが、唐辛子を一本まるまる使うことはない。三分の一をちょいと輪切りにして、それをパッパと使う程度。それだけでも十分辛いし、カプサイシンの力はしっかり感じることができるからだ。
それなのに、以前食べた鍋には、少なくとも八本は入っていた。いや十本くらいあったかも。とにかく「そこまでする???」ってほど入っていた。味はもちろんドチャクソ辛かった。見た目に赤かったから当然である。
辛すぎる料理を食べた翌日は地獄だ。私は胃腸がそんなに強くないと思っているので余計だ。お腹は痛いしお尻はヒリヒリする。ひりつくぜこの感覚。絶対に後悔するだろう事は、正直食べる前に分かってはいた。
しかしそれでも、私は唐辛子もりもりの鍋を食べた。そしてめっちゃ美味しかった。翌日辛いのが分かっていても、唐辛子が発する芳香には抗いようもない。コイツは食ったら辛い。でも一口目は絶対美味い事がわかってる。なら、食うしかない。
人類は美味い物を食べるために命を掛けてきた。飽食と呼ばれる昨今、先進国ではすっかりとその意識は抜けきっているが、本来人類とはうまい食い物のためにリスクを取れる生物だったはずだ。あの甘く熟れた果物を取るために、木の下を縄張りにしている虎と対峙する必要がある。ならば虎と戦おう。光り輝く美味い宝石のために。この精神を我々は引き継いでいるはずなのだ。
これ食ったら絶対腹壊すだろうな。
そんな程度のリスク、かつての人類から言えば鼻で笑う程度の問題だ。翌日腹を下そうが、今目の前にある美味そうなカプサイシン盛々鍋を食うべきなのだ。辛さを堪能し、肉と野菜を喰らい、おまけに白身魚なんかも入れちゃったりして、ちょっと箸休めにエノキを食うのだ。これが人の”生きざま”なのだ。翌日のツラさは翌日の自分に任せれば良い。”美味そう”には抗えない。カプサイシンには抗えない。
翌日、腹を悪い意味で抱えながら、私はベッドから身体を起こした。
恨むぞ~~~~昨日の私~~~~~なんて思いながら、それでも昨日味わった鍋の美味さは、一生覚えているだろう。
ちなみに、唐辛子に含まれるカプサイシンは、適量ならば血圧の低下や脂肪燃焼効果のあるリパーゼを出したりしてくれるらしい。血管拡張効果もあり、しかもコレステロール値を下げたりもしてくれる。素晴らしい。コイツここだけきくと万能じゃね?
ただ摂りすぎると転じて毒になる。逆に高血圧になったり、胃食道逆流症、排尿障害を起こす可能性もあるとか。あとなんか摂りすぎると普通に死ぬらしい。50kgの体重の人は、3,000~3750mg位とるとマジで危ないらしいから注意しよう。まぁこれ、一般に市販されている卓上の一味唐がらしに換算すると67瓶になるらしいので、まず摂取は不可能である。摂取したやつがいたら別の理由でも死ぬと思う。
なんでも適量がいい。
自然界は、人類にそれを教えてくれている。
ただそれでも、私はまた唐辛子マシマシ鍋を食うだろう。
だって美味かったし。