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33 中高年が行く南インド57泊59日⑨ (マハバリプラム←→ ECR)

 ラクシュミー・コテージはナイスな宿だった。若い二人の青年スタッフがいつも陽気に働いている。掃除とか水撒きとか、水撒きとか掃除とか。
 それに、部屋の水が出なくなったらすぐ修理してくれるし、電球が切れたらすぐ替えてくれるし、停電したら蝋燭とマッチを持ってきてくれるし、でも隣の白人が夜更けに騒いでも知らん顔だったな・・・って問題だらけやん。とも言えるが、なぜか許してしまえる居心地の良さなのだった。

 宿が良ければ滞在も手放しで楽しい。
 海岸寺院やパンチャ・ラタ、クリシュナのバターボールなど有名処も、野晒しの無名の遺跡も、よき哉よき哉。いいねえマハバリ村。

 のんびりしながら次の計画を立てたりもした。来た道を戻らずに列車でコチへ横断するのはどうだ。で、トリヴァンドラムまで西海岸側を下りていく。コチはわたしも行ったことがないので、なんか、ええんちゃう。

 ならば列車の予約だ。
 前回のひとり旅ではコルカタ行きのチケットを村の代理店で頼んだのだが、今回は時間もあるし(前回もヒマだったが)、もやもやが残るチェンナイまでのルートを確認しておきたい。
 そんなわけで、マリーさんと連れ立ってコチ行きが発着するチェンナイ・セントラル駅に出向いたのが、日記によると2月17日、マハバリに来て5日目。

 宿で尋ねると、チェンナイ行きは新しいバス停から出ているとのこと。教えられたとおりに村の北へ北へ外れて行くと、荒れ地を突っ切る立派な道路が現れた。
 はっ・・・。
 これは14年前、チェンナイからバスで南下してきた道ではないか。そうだ、椰子の木立を抜け、途中、ベンガル湾から昇る朝日を見た、あの道だ。こ、こんなぴかぴかのハイウェイになっていたのかーーーー

 しみじみしていたらバスが来た。" ECR "と表示されている。行き先はわからない。例によって車掌に、運転手に、乗客数人に「チェンナイ・セントラル?」と確認し、全員うなずいたので乗る。そうかそうか、" ECR "に乗ればダイレクトにチェンナイへ出られるのだな。

 ハイウェイは案外すぐ終わり、けっきょく渋滞の道を1時間以上かけて市街地に入った。そして終点に着いて愕然とした。鬼門、モフジール・バス・ターミナスではないか。
 5日前、ここでマハバリプラム行きの直行バスはないって言われたんですけど。

 まあでも、とりあえずは列車の予約だ。チェンナイ・セントラル駅までオートリキシャに乗った。結構遠かった。渋滞と排気ガスと暑さでへろへろ。

 セントラル駅の予約フロアには、しかし、外国人専用オフィスがありエアコンが効いていた。外国人でよかった。
 パスポートコピーの提出が必要だったが、マリーさんが部屋に置いてきた(貴重品と一緒に携帯しておくよう、あれほど言ったのに何故置いてくる)と言うので、一旦駅裏のマーケットに出てゼロックス屋を探し、コピーを取る。
 そんなひと手間はあったが、比較的スムーズにセカンド・スリーパーの予約が取れた。2月22日、コチのエルナクラム・タウン駅行き。
 なんで22日にしたのかは不明。ゾロ目で、ってことかな。

 駅裏の屋台食堂でお昼を食べ、夕方のラッシュ前にマハバリへ帰ることにする。ふたたびオートリキシャでモフジール・バス・ターミナスだ。
 ああ、なんか嫌いだあ、ここ。暑い。喉乾く。

 これだけ広いのだから、あの中はフードコートかも、と乗り場を突っ切って平屋の建物に入ってみた。すると、売店が数軒並び、その奥に巨大バスターミナルが広がっている。なんと長距離バス乗り場は屋根の下にあったのだった。

 5日前のおっさん、なんで教えてくれへんかったんや・・・・

 売店のアイスコーヒーを手に歩いて回り、" ECR "が停まっているのを見つけた。
 車掌に、運転手に、乗客に尋ねる。
「マハバリプラム?」
 全員「イエス」。
 おお、ダイレクトに帰れる。
  ECR は East Coast Road の略だということもわかった。納得。
 直行バスは無いと言い切ったおっさんは何なんだ。自分の管轄のバスに乗せたかっただけなのか。車掌と運転手もグルか。それとも自分の管轄外はほんとに知らないのか。今度はそこがもやもやするが、まあええわ。
 ワンパーソン80ルピーを払い、さほど快適ではなかったが(ノーエアコン)、乗り換えなしで村に帰れた。
 
 それにしてもチェンナイの息苦しさときたら。人も車も多すぎる。空気悪すぎる。暑すぎる。涼しくて呑気な海辺のマハバリプラムにずっといたいなあ。
 なんて願ったら、叶ってしまうよ。
 さて、5日後に出発なのだが。

⑩につづく


マハバリプラムはアイスも美味しい↓



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