15 飛行機は悩ましい 前編 (エチオピア・エアライン、スリランカ・エアライン )
飛行機が嫌いだ。
狭い。うるさい。眠れない。
揺れたら怖い。耳が痛い。
チェックインでは必ず通路側の席をお願いし、何度もトイレに立って気を紛らす。
ちょっとだけ楽しみな機内食はすぐ食べ終わってしまうし、食事中に揺れたりしたら一気に食欲が失せる。
ずっと寝ている人が羨ましい。わたしは深夜便でも何でもほとんど眠れない。
そして、待ち望んだ着陸時には、必ず死ぬほど耳が痛くなり、数日治らない。
バンコクからアジスアベバへ飛んだ、満席のエチオピア航空がいちばん辛かった。
乗客は、ほとんどがアフリカ各地へ帰る感じの裕福そうな人で、あとは中国人、イスラエル人バックパッカー(テルアビブ経由で、これがイスラエル←→タイの最安値フライトらしい)、欧米人ちらほらという内訳。
わたしは通路側を死守しており、中央3人掛けの端っこだった。隣のふたりはカメルーン人と中国人のビジネスマンコンビで、中国人がTシャツと腕時計を商っているのだそうな。
離陸してしばらくは、仕事の話などを聞いて気が紛れたのだけど、なんか、すごく、機体がずっと小刻みに揺れ続けているのでだんだん不安になってきた。ふつう、こんな揺れ方しないんじゃないか。
しかも、暑い。飛行機の中が暑いってどういうことよ。
そういう温度設定なのか、空調が壊れているのか。
キャビンアテンダントは終始不機嫌そうで乱暴な態度だった。
アフリカ大陸は遠い。ほんの入り口のエチオピアなのに、バンコクから10時間ぐらい乗った。苦行だった。機内食を食べたはずだが、美味しくなかったのか揺れて怖かったのか、記憶がない。
もうすぐ着くという頃、揺れはさらに激しくなった。おかしい。ぜったいこのヒコーキこわれてる。
どかんと衝撃があって、墜落と思ったら着陸だった。
それはそうと。
一度だけ、幸せなフライトにめぐり逢ったことがある。ビジネスクラスに乗った、じゃなく乗れたのだ。オーバーブッキングに遭って。バンコク発コロンボ行きのスリランカ航空。
搭乗前に座席番号で呼び出され、何ごとかと思ったら昇格だった。おおおおっ
カミサマありがとう。カミサマに褒美をもらったのは、わたしとドイツ人バックパッカーと帰省するモルジブ人だった。初対面でハイタッチする、一生ビジネスに縁の無さそうな三人・・・。
ビジネスクラスの席はニッポンの新幹線のようにゆったり広く、飲みもの食べものは落としたら割れる食器で提供された。
デザートは、メインの食事が下げられてから運ばれ、ケーキかチーズかを選べたのでチーズをもらったのだけど、けっきょく余ったからとケーキも回ってきた。
リクライニング・シートは後ろを気にせず倒せた。
なんて快適なんだ、ビジネスクラス。いっそこのまま関空へ帰ってくれてもいい。
しかし、こんなに快適なのに、コロンボは近かった。3時間半ぐらいで降りなければならなかった。この席でアジスアベバへ運んでほしかった。
スリランカ到着後は、いつもの怒涛のバス移動。
だけど、
それでも、
飛行機のビジネスクラスより、地上を走るバスのほうがずっと好き。