長い夏休みの日々
ひとり出版をやろうと思った。
わずかだか退職金と貯金で最初の何冊か分はまかなえそうだ。
固定費を低く抑えて地道にやろう、
登記用住所を借すレンタルオフィスも多いから最初はそれで、
実際の作業は自宅でやればいい。
発行のスケジュールがたったら倉庫を借りよう。
問題はやっぱり企画だ。
前職と同じ専門書か、同じ分野でも読者層を変えたらどうだろう……
……私は知らなかった。
ISBNをとるためにはちゃんとした事務所がないとダメらしいのだ。
やはりちゃんと部屋を借りないといけない。
つまりそれだけで月々数万円が飛んでいくということだ。
なんて恐ろしい。
ある程度企画の目処がたってから登記したほうがいいだろうか。
個人が本出しますんで原稿ください、って言って、
いいよ、って言ってくれるような方がいるだろうか。
そんな危篤な方がいたとして、
原稿がどのくらいでいただけるんだろうか。
その間もただ家賃を払い続ける。
そうだ、名刺。
メールアカウントとか電話番号とか、
どうしよう。
退職から数か月、動けなかった。
結局、会社員時代はわかりませんですんでいたことを学び始めた。
まずはお金まわりだな、と簿記検定を受けてみたり、
著作権関係苦手だったっけ、と知的財産管理技能検定を受けてみたり。
東京都が無料で提供してくれるセミナーも受けてみた。
起業したい人向けのワークショップなんかにも行ってみた。
なんだか楽しかった。
勉強することがたくさんあることが嬉しくて同時に言い訳にもなっていた。
夏休みの日記みたいにこれが終わったらやる、これが終わったらやると。
学生時代以来のほんとに楽しい、
長い夏休みみたいな生活がいまだ続いている。
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