シルヴィ・ギエムについて

百年に一人のスーパー・バレリーナと言われるシルヴィ・ギエム。
パリ・オペラ座でエトワールに任命されたあたりから日本でも人気が出て、その頃からずっと好きです。
先年引退しましたが、2、3回彼女のパフォーマンスを生で見られた経験は貴重なものです。
その魅力は数あれど、私はやはり爪先の美しさ、甲の高さ、膝からふくらはぎにかけてのなんともしなやかなラインが好き。
あの湾曲した爪先を見ているだけでうっとりと一日中過ごせそう。
もちろん魅力はそれだけではなく、身体能力の高さと弛まぬ努力に裏打ちされた踊りは、他の優れたバレリーナたちとは一線を画します。
顔立ちも、特にメイクをしているときは相当な美貌。とりわけ若い頃のなんと美しいこと!
もともと痩せ型なこともあり、最近では顔も体も筋張ってシワシワな感じではありますが…
テクニックの優れた人、脚の綺麗な人、芸術性の高い人、バレエダンサーには本当に多くの逸材がいるのに、彼女を唯一無二たらしめているものは何か?
言葉で説明しがたい要素はさておき、あの地面に突き刺さるような細く湾曲した爪先は、遠くから見てもすぐにわかります。
あれだけ細身なのにか弱い感じはなく、まるでパートナーの支えを必要としないかのようにぶれない軸を持つ身体。
圧倒的なリズム感、音感。
動と静の絶妙なバランス。
感情がなさそうなのに、情感豊かな表現力。
ステージから放たれるカリスマ性。
多分、もっと書き続けられますが、この辺で。

一つだけ、些細な不満は、キャリア後半のヘアスタイル。コシやツヤがあるとは言いがたい、オレンジっぽく染めた長い髪はあまり好きではありません。
イン・ザ・ミドル…を初演した頃のボブカットが、彼女のクールでシャープでミステリアスな雰囲気にピッタリでした。

彼女を模倣しても、結局彼女にはなれないし、匹敵すらしないとさえ思えるので、後継の世代には、それよりは、自分のセールスポイントを見極め、伸ばしていってほしいです。

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