いにしえの職場の話〜ゴーゴー百貨店〜④佐藤さん
謎の一年ぶりの更新。
調理器具、食器売場にいたときに、
佐藤さんという鍋の売り子のおばちゃんがいた。マダム風ないでたちで、三田佳子をショートカットにしたような人だった。お化粧もバッチリして綺麗な感じ。まぁ派手だったわな。
そのころ、鍋の売場は鍋島藩といわれていて、鍋売場ってだけだけど。鍋島藩は毎日バチバチ販売員さん同士で対立していた。いろんなメーカーから来てるそれぞれのメーカーが売場に立っているもんだから、お客さまの取り合いとか。。あるあるか。
当時の私はびっくりして。こんな本やドラマで見るようなホステス嬢みたいなお客を取った取られたというバトルをリアルで見ることになるなんて! と。
売場の床が30センチ四方の正方形の木目調のパネルが連なっている床だったのだが、そのマス目のこっちからこっちに入ったお客さまは私のものみたいな、よくわからんバトルやらを繰り広げていた。すっげ。
私は百貨店側の人間だったもんで、誰の肩を持つでもなく、とにかく流していた。
そうそう、それで佐藤さん。
佐藤さんは派手で自分のところの鍋が一番! という人。他の鍋の悪口をお客さまに言って自分のところの鍋を販売してしまうからタチが悪い。そりゃバチバチになるし、そんなん置いてるお店もどうなの?って話だし、店側も困りものだが売ることは売るのでなんとなくお咎め無しだった。っつーかウヤムヤも得意だったわな、会社ってとこは。有耶無耶〜
が、よくよく佐藤さんの生い立ちなんかを食事休憩なんかで本人からぽろぽろと聞いてみると、人生で2回も全焼の火事にあったり自分の親や旦那さんの親や兄妹などの介護も済ませていたりとなかなか外見の派手さから想像がつかない苦労しましたという人生だった。
そしてその時は落ち着いて鍋を売って、苦労話をしたり充実しているようだった。
苦労話のあとはねちっこい自慢話。
自慢の息子ショーゴはオーストラリアに行っていて、確か勉強をしに。勉強中の身なのにホームステイ先のアリシアと恋仲になってホストファミリーとも良好にしてるからそのまま学生結婚をするかも、とか。
飼い犬のフィービーはシェットランドシープドッグで由緒正しい犬でなんらかのコンテストで4位だったのよ、とか。え。由緒正しいてなに。犬は全てかわいいよ。
そんな佐藤さんは結局さいご乳癌になり他界してしまった。苦労も自慢もぜんぶ胸にためこんで切りとってから晴れやかに召されたと言っていたよ。
強烈に生きたよって感じ
おしまい