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【歌詞語り】山口百恵「絶体絶命」
過日、河合奈保子「けんかをやめて」について記しましたが、それは「男2女1」の構図でした。本日は「女2男1」の歌について語ります。
山口百恵「絶体絶命」
発売年:1978
作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
別れて欲しいの 彼と
そんな事は出来ないわ
愛しているのよ 彼を
それは私も同じ事
冒頭から「修羅場」です。のっけから緊張感が漂います。
この女性二人は「夕暮れ迫るカフェテラス」で対峙していると、、
そこへ彼 遅れてきた彼
ふたりとも 落ち着いてって言ったわ
男がカットイン。女性を二人待たせておいて、そこへ「まぁまぁ落ち着いて」と言わんばかりにしゃぁしゃぁとカットイン。とにかく太いヤツ。修羅場の緊張感が更に高まる。
三人模様の絶体絶命
さあさあ さあさあ
はっきりカタをつけてよ
はっきりカタをつけてよ
はっきりカタをつけてよ
登場人物三人を交互に映し、それぞれズームアップしていく画が浮かんできます。凄い。このカット割りを言葉と音楽で表現してしまうなんて。
やってられないわ
その人と私のどちらを選ぶの
この「やってられないわ」は、「やってられっか!!」という怒りが勝った感じです。
一輪挿しの薔薇の花
その人はずらし涙を隠すの
チラリと視く唇は
コーヒーカップと一緒に震えてる
歌い手から見て恋敵のこの女性は、涙を流したり、唇を震わせたり、ある種の「弱さ」が垣間見えます。
そこへ彼 話しかける彼
二人共愛してるって言ったわ
人間模様の絶体絶命
しかし、この男。どの口が言ってるのか、、と思っていたら
さあさあ さあさあ
すっかりカタはついたわ
すっかりカタはついたわ
すっかりカタはついたわ
やってられないわ
その人の涙の深さに負けたの
とこの歌い手の敗北が決してしまいます。どちらかというと強気に見える歌い手の女性ではなく、この修羅場において「涙」を見せる女性の方に軍配があがったことになりますが、ここでは男性の意思というより、歌い手の女性が身を引いた、というように見えます(「勝敗」の要因については、議論の余地がありそうです)。
Bye bye bye bye やってられないわ
Bye bye bye bye やってられないわ
最後の「やってられないわ」は悲哀ともとれるし、修羅場が閉じた虚脱の感情にも思えます。
しかし、わずか3分ほどの作品で、男女3人を包むたまらない緊張感、そしてそれが一気に収束する様が鮮明に描き出されているのには、驚嘆するばかりです。やれ誰と誰が引っ付いたの別れたの、とかいうだけのペラッペラのお芝居とはわけが違います。こんな作品に触れられるので「歌謡曲」の世界はたまらんのです。