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金木犀、冬に消ゆ

秋に芳しい香を放つ金木犀。
その芳香は、当然に幾年も享受できると思っていた。

ある日、馴染みの道に在る金木犀の樹が、
忽然と姿を消していた。
その樹が植わっていた家の主も、そこを去り、
樹もそれに合わせたようである。

人のみならず、地に根を生やすものさえ、常に在らず。
その別離が、香の盛る時でなかったことを、せめてもの慰めとする。

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