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このトゲと共に生きる

腕や足に刺さったトゲは抜くことはできるけど、胸に刺さったトゲはどうやら抜くことはできなさそうだ。

というのが、今のところの僕の結論である。

そして、抜けないトゲなら、痛くなくすればいいじゃん

というのがそんな僕が導き出したひとまずの方法論だ。

けど、これまでの僕は、その努力をする代わりに、もうあのトゲは刺さっていないというフリをしていただけだったように思う。

なぜかと言うと、普段は、確かにあの時のように胸が痛むことはなくなったけれど、あるシチュエーションが訪れるたびに、どうしようもなく激しく胸が痛み出して、挙げ句の果てに、僕は混乱し、暴走して、大切な人を傷つけ続けてきたからだ。

そう、あのトゲはまだ刺さったままだったのだ。

そして、誠に残念ながら、そのせいで今年もまたやらかしてしまった僕は、数年前に知り合ったとてもかけがえのない同い年の友人をひとり失ってしまった。

激しい痛みが治まりいつもの冷静さを取り戻した僕は何とか許してもらおうとしたけれど、そして、結局、その人は許してはくれたのだけど(たぶん)、僕からは離れていってしまった。

その人がそうせざるを得ない事情があるのも分かったつもりだったけど、失ったものの大きさに僕は呆然としてしまった。

まさに、覆水盆に返らず、とはこのことだと思った。

でも、だからこそ、この胸の痛み、トゲじゃない方の痛みを僕はしっかり受け止めて、

何とかこんな自分を変えたい

と心の底から思えたのだった。

その結果、導き出したのが冒頭の考えというわけである。

じゃあ、抜けないトゲを痛くなくする方法はいったい何なのか?

正直、今の僕には全く見当もつかないし、これから先もその明確な方法は見つからないかもしれない。

でも、胸が痛み出す度に、

まだトゲが刺さっている

という事実をひとまずちゃんと認めることはとても重要だと考えている。

そうすれば、我を失いそうになる自分を少しだけ俯瞰で見つめられて、一度、心が暴走しても、すぐに立ち止まれてそこまで被害が大きくならないと思うし、実際、その手応えを感じ始めてもいる。

本当は、心がまったく揺るがされないことが一番なのは分かっているけれど、今の未熟な僕にはこれがどうにもなかなか難しい。

でも、一生かけてでもなんとかしたいと思っている。

というのも、僕にはどうしてもかなえたいささやかな夢がひとつあって、その夢の中にはその友人が絶対に欠かせないからだ。

うん、本当にどうしようもなく愚かな僕は、実際、まだ何も諦めていなかったのだった。

けど、実際、何年、いや何十年かかっても構わないけど、どうしても叶えたい夢でもあるんだな、これが。

ちなみに、この僕の胸に刺さっているトゲの正体は、みなさんお気づきの通り、

言葉の棘である。

「こんなこともできんのか」

「鈍臭いヤツやなあ」

「気色わる」

「ダサいなあ」

「ブサイク」

「おまえみたいなヤツがなんで生きているの?」

「早く死ねばいいのに」

本当はどうにかしてきれいさっぱり忘れたかったし、ずっと忘れていたふりをしていたけれど、どうやらそれは無理らしいから、何とかして痛くないトゲにしたいと思っている。

そして、それが出来るのは他の誰でもなく

こんな僕自身しかいないんだ。

そう硬く自分に言い聞かせて、この一年を終えたいと思います。

そして、最後にこの1年間、私の記事を読んでくださった皆様に改めて感謝の言葉を述べさせてください。

みなさんのおかげで今年もなんとか生き延びることができました。

本当にありがとう。

どうかよいお年を。

また、来年、お会いしましょう。

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