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スキパワーはマジ最強

木曜日 終業時間

今週はあともう一日あるっていうのに、僕のガソリンタンクのメーターの針はすでにほとんどエンプティを指していて、帰路を進む足取りもまるで地上に根を張ったように重かった。

その時、妻から電話がかかってきた。

「今日、帰ったら◯◯と卓球行くって約束してたけど、本当に大丈夫?」

や、やべぇ!すっかり忘れてた!でも、あれだけ息子が楽しみにしてたのだから、これはとっと家に帰らなければ!

この瞬間、急に全身にエネルギーがみなぎった僕は、先ほどの自分が嘘みたいに、ひとり超高速参勤交代と化してジェットで帰宅したのだった。

そして、晩御飯の妻お得意のお好み焼きで栄養補給をすばやく済ました後、いつもの体育館まで息子と2人で自転車で向かった。

この街に来てから夜に2人で自転車を漕ぐのは確かこれが初めてだよなあ

となんとなくそんな感慨に浸ってたら、前を走る息子が早速、道を間違えていた。

「ちゃうちゃう!そこ曲がるんやなくて、真っ直ぐなー」

「なんか夜の街っていつもと違って見えて訳分からんわ」

僕なら絶対にありえないミスに呆れながらも、そっかあ彼には僕以上に夜の街が特別なものに見えているんだな、と思ったら、そんな息子のことがたまらなく可愛く思えた。

その後、「最近、体力ついてきたんだよ」と言いながら、確かに漕ぐスピードがぐんぐん速くなっていく彼になんとか必死にくらいついたら、あっという間に目的地の体育館に到着した。

しかし、自分でも不思議だな、と思った。

だって、ほんの数時間前まではめちゃくちゃ疲れ果てていたはずなのに、しかも、月曜日には腰に激痛が走って動けなくなってすらいたのに、今は本当にまるで羽根が生えたみたいに全身が軽くて、実際、卓球を始めてからもピンピン体が動いて、結局、2時間たっぷり彼の練習に付き合えたのだから。

そして、練習を終えて、自転車置き場に向かう道すがらその理由はなんだろうと考えたら、すんなりと答えが出た。

それは、もちろん、僕が息子のことを大好きだからに決まってるじゃまいか!🇯🇲

その好き加減は、目に入れても痛くないという、よくよく考えると意味不明なことわざのレベル以上、すなわち

彼のためなら僕はまったくためらうことなくこの命を差し出すだろうってくらいの勢いである。

そりゃあ少々仕事でくたびれ果てたって、ピンポンくらい余裕で付き合えるっしょ!

そして、僕がなぜ彼のことがこんなに大好きなのかというと、それはもちろん

彼が僕の子供だから

というわけでは決してなくて、今までその彼の生きる姿をずっとそばで見続けていた者として、

本当にごく自然に

彼のことを

ひとりの人間として、

心底スゲエェなあと思うようになっていたからだ。

もう2年も学校に満足に通えてない息子は世間的に見たらそれこそ完全な落ちこぼれなのかもしれないけど、そんなささいなことなどほんとどーでもいいと思えるくらい、マジ卍(まんじ)で彼は、僕がこれまで出会ってきた全人類の中で、

最高に面白くて、最高にいいやつで、そして何より

最高にポップなヤツ

なんだよな。

うちに帰ってから、

「もしかしたら今こそこの魔法の杖を使う時かもしれない」

なんて神妙な面持ちで話し始めた彼を見つめていたら、僕のその確信はさらに高まっていった。

というわけで、改めて

本当にこんなにも僕を好きにさせてくれてありがとな!

まあ色々と大変なこんな世の中だけど、君がくれた最強のスキパワーのおかげで、お父さんはまだまだバリバリ全力で頑張れそうだぜっ!



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