横浜の山瀬
昨夜行われた天皇杯準々決勝でJ2のレノファ山口が11年ぶりの優勝を目指す横浜F・マリノスとニッパツ三ツ沢競技場で対戦しました。J1の鳥栖を0−2と下した山口とJ2の長崎に2−3と辛勝した山口の対戦ですが横浜が直近のACLE、リーグ戦で大敗し調子を落としているところからジャイアントキリングの可能性もある試合となりました。
降り出した雨の中開始された試合は前半、エウベルの個人技などで攻勢、山根陸のミドルで先制しますが、前に出る積極的な守備を見せていた飯倉大樹が処理を誤り失点。
さらにこの試合先発のジャンクルードがルーズボールの競り合いで一発退場しマリノスが数的不利に追い込まれました。
しかしその時間も長くは続かずマリノスの個人技をファールで止めてきた山口の守備陣、ついに沼田選手が小池龍太の突破に足をかけイエロー2枚目の退場となりました。
エンドの変わった後半は10人対10人の攻防となりマリノス優位の展開の中、エウベル・ヤンマティウス・ロペスのブラジリアントリオと水沼宏太が得点し5−1で準決勝進出を決め10月27日にガンバ大阪と戦うことになりました。
この試合ではマリノスサポーターにとって勝敗の行方もさることながらマリノス所縁の二人の選手の試合出場があるのかということが注目ポイントとなっていました。
その山瀬功治、田口潤人の二人ともサブではありましたがメンバー入り、選手紹介で拍手したことは言うまでもありません。
27歳の田口はともかく42歳の山瀬にとって競技人生の中でマリノスとこの先、対戦することはかなり可能性が低いと思われる中、より力のこもった拍手であるように感じられました。
山瀬は札幌・浦和を経て恩師の岡田武史監督に請われて2025年加入2010年まで6年間、背番号10を背負って主力として活躍、「俺らの10番オーオー 横浜の山瀬 俺らの10番オーオー 横浜の功治」というチャント共にオールドファンの心に残っている特別な選手です。
それだけに彼がメンバー入りして横浜に来てくれるのか、私たちの前で往年を偲ばせるプレイを披露してくれるのかは試合前からSNSなのでマリノスサポーターの関心事になっていました。
マリノスが4−1として勝利をほぼ手中にしたと思われた後半34分、ついにその時はやってきました。マリノス時代とは違う背番号33を背負った山瀬功治が私たちの前に現れました。
優しさ溢れる風貌は変わらないのですが、川崎・京都・福岡・愛媛そして山口と重ねたキャリアが人としての深みを増した気がします。
(私が直接山瀬のプレイを見たのは2017年のアビスパ福岡と町田ゼルビア戦なのですが、あれから数えても7年経過してるので当然です。)
契約更新という厳しいハードルを何回も乗り越えてきて、この年齢でその場所にいることは本当にすごいことです。
そしてピッチ上のプレイもマリノスの選手たちと張り合い前に前に進む闘志で、昔を思い出させてくれます。
マリノス在籍から14年、ゴール裏のメンバーの多くは当時を知らない世代となっていますが、あの頃の山瀬功治の切れ味の一端を直接目にすることが出来たのは素晴らしいことだと思います。
劣勢の場面では本来であれば若手にチャンスを与えたいところを、山瀬功治を起用していただいた山口の監督さんにも感謝したいと思います。
そして最高の瞬間は試合後に用意されていました。
マリノスの選手たちがビクトリーランを済ませピッチを引き上げた後、田口潤人とともに山瀬功治はゴール裏までやってきてくれました。
気遣いの人柄そのままにスタジアムに残るファンサポーターのために四方に会釈を返しながら小走りにやってきてくれた姿は印象的でした。
ゴール裏の大勢のサポーターに向けた眼差しと拍手、ゴール裏から彼に向けた14年ぶりのチャント、そこにいる私たちの心は幸せでいっぱいになりました。
山瀬功治という個人にとっても最高の場所だと思えてもらえたら嬉しいのですが、どうでしょう。
2010年末のマリノスとの別れは突然やってきて松田直樹、山瀬功治、河合竜二、坂田大輔、清水範久など功労者の大量解雇。最終戦でのセレモニーは寒々とした日産スタジアムで行われました。スーツ姿で別れの挨拶をしてくれた時はまだ29歳。https://youtu.be/R0Ko1o0GZDo?si=vO8B4km9FTM4j9Xz
本当に不本意だったと思いますが、あれから14年経って「俺らの10番オーオー横浜の山瀬 俺らの10番オーオー横浜の功治」のチャントをどういう思いで受け止めてくれたのでしょうか。
怪我との戦いもあったサッカー人生の始まりから、大半の仲間たちがピッチを去って後も長く選手として活躍を続けていることは、私たちの喜びであり、所属各クラブのサポーターも同じ思いだと信じます。彼のアスリート人生を支えるために料理研究家にまでなった奥様と共に、この先、その時が来たら所縁のスタジアムで一緒にサッカー観戦してもらえたらなと妄想しています。
どうか、その時が来るまで、1日でも長くピッチに立ち続けてください。
昨日は素晴らしい時間を私たちのためにありがとうございました。
私たちにとっては永遠に「横浜の山瀬」です。
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