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クソッタレ共に愛を。日記4/30

渋谷駅の中央出口に向かう間、

スクランブル交差点が
見下ろせるところがあって、

こんなに人がいることは、
すごいなって思った。

同時にずっと見ていたら
飲み込まれてしまいそうな
そんな恐怖を携えていた。

それはなぜだか
幼いときに感じた恐怖と
通じるものがあって、

やたら苦い粉薬を、 
誤魔化すように包んだ

チョコレートアイスの味を
なぜか不意に思い出す。

あんなの忘れるぐらいがちょうどいい。

小さい頃から、
みんなの何気なくできることが

恐怖だった。

体育の時に、
人前で着替えるのが
すごく苦手だった。

パンツを見せると
笑われそうだから。

温泉も、銭湯も嫌い。

友人や家族に裸を見られるのが苦手。

トイレで自分の尿の音を
気にして用を足さずに
出たこともある。

尿の音を聞かれることが
恥ずかしかった。

そういう日に限って
家の玄関の鍵は、
ランドセルの奥底にあって
冷や汗をかきながら探した。

今でもトイレに行く時は、
音姫が奏でる数十秒に
全てを賭ける。

でも、音姫は無情であり、
全然短いのだ。

敗北のレクイエムが脳内で流れる。

所詮便所から出られない、
囚われの姫のくせに。



スクランブル交差点は、
いろんな人がいる。

私の疲れや苦労を知らない人

しかいない。

それは同時に、
私もあそこに立っている彼の
辛さなど何一つ知らない。

だからぶつかっても
スルーしてしまう。

満員電車で、
構わず押してしまう。

ごめんなさいを言える
余裕もない。

席を譲れる、
体力さえも残っていない。

これでも必死なんだぜ。

そんな想いを乗せて、
今日も人が集まる

京王井の頭線の渋谷駅。

知らない人を恨み憎むことで、

大切な人に優しくできるならと、

そうしたら今日踏まれた
靴のつま先のゴムの汚れも、

可愛く思えるだろう。



スクランブルの渦に、

巻き込まれないように
必死に生きよう。

頑張る日々にささやかなご褒美をと、

お風呂上がりのアイス、チョコレート。

部屋にかざる一輪の花と、

クソッタレ共に愛を。

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