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34歳夏、キャミソールを着る

大人になる程、肌を見せることに対してなんだか抵抗が生まれてくる。特に日本では、「30超えて足出して」とか、「良い大人だしビキニはちょっと・・・」とか、なんとなく思っちゃうし、「二の腕 何歳まで 出していい」とかその類のワードを一度は検索したことある方も多いのではないだろうか。ある種の呪いだと思っている。
振り返れ私自身もば学生の頃から、毎年夏が来る度、「こうやって肩を出すの最後かな」とか「ショートパンツはもう履けないかな」なんて思いながら、夏のファッションに少しばかりの切なさを感じながらも、楽しんでいた。
別に若い人は肌を出して良いとか、大人になったらこの部分を隠さなきゃいけないとか、こういう服はみっともないとか、年不相応とか、そんなルールはどこにもないのに、無意識に自分の中に価値観が埋め込まれてしまっているのである。

そして現在。今だに二の腕を出し、足を出し、背中を出している。年齢を重ねて、露出面積は減るどころか、若干増えている気すらする。どういうこっちゃ。色々考えてみたけど、理由は3つある。まず、シンプルに、日本の夏が暑すぎる。私自身もかなり暑がりであり、肌を出したくないとか言っていられない。少しでも自分を覆う布を減らしたい。そうでないとこの猛暑を乗り越えられないのである。そして次に夏のファッションが好き、ということである。夏自体の訪れにはそこまでワクワクしない大人になってしまったのだが、ファッションという面では四季のなかで夏が圧倒的に好きである。重ね着や、冬のセーター、コートなど、色々と着込む行為があまり好きでないこともあり、夏の少ないアイテムでコーディネートを考えると異常にワクワクする。そして最後に、自分自身が人の目を気にしなくなってきたことである。元々着たい服を着よう、という思想を持っていたが、年齢を重ねてそれがより強くなってきたように思う。それに、今の自分の気分とかを大事にしている方が、人として魅力的だろう、というなんだかそれっぽい理由を後付けしてみる。これらの理由の結果、露出系バリキャリが爆誕した。

とはいえ、腕も背中も足も腹も出すとなると、自分的には若干やり過ぎ感が出る。痛々しさや、いやらしさ、年齢に抗っている感じは出さずに、さりげなく、自然に、品があって、でもちょっとだけヘルシーでセクシーな感じでいきたいのである。なんだか注文が多いな。ゆえに、どこか出したらどこか隠す、を自分の中で基本ルールとしている。ノースリーブの服を着る時には膝は隠すし、足を多少出すなら、腕は少し隠そうかとか、そんな感じでやっていた。そして昨年の夏あたりからふと、「そういえば、背中って出したことないな」と思い、空前の背中が空いた服のブームが個人的に訪れた。背中というのは、大人の肌見せパーツとしてはちょうど良い。仮に腹を出すと冷えるし、ご飯を食べるとちょっと出てくるのも気になる。足はそこそこ面積が大きいので、パッと全体を見た印象で、「すごい足出してるぅ」という感じは出てくる。が、背中であれば、正面から見ても分からないし、羽織をかぶれば隠される。ふとしたときに、ちょっと見えるか見えないかぐらいというのが、なんだかちょうど良いのである。(ちなみに、自分的にはちょうど良いなと思っていたのだが。。昨年の真夏の休日に職場の新入社員の部下と飲み会があった。私が背中の開いてたワンピースを着ており、初めて上司の私服を見た部下は「あ、想像してた社会人の上司じゃないんだ、と、思った。」と、少し時間が経ってから教えてくれた。若者に余計な刺激を与えてしまって申し訳ないな、とその時ばかりは少しばかり反省した。)

そして今年の夏、黒いラメ糸が織り込まれたキャミソールを買ってみた。果たして昨年の反省が活きているのかやや怪しいチョイスである。それにインナーとしてではなく、服としてキャミソールを購入したのは、もしかしたら初めてかもしれない。タンクトップやノースリーブはたくさん着るのに、なぜだろう、キャミソールって、肩の紐がちょっと細くなっただけで、一気に露出している感じが出てきて、少しだけ勇気がいるのである。個人的に今年「Gajess」というブランドにハマっていて、そちらのキャミソールを購入した。昨年できたばかりの新しいブランドで、オンラインを基本に、たまにポップアップを実施している。ディレクターの三條場さんは同世代で、大人の肌見せやボディラインを綺麗に見せる服を得意としている。春服も爆買い&大活躍だったし、ブランドコンセプトもまさにこの夏の気分にマッチしていた。そして私が購入したキャミソール、大変人気だったようで、売り切れと再販を何度か繰り返していて、たまたま再販のタイミングで購入することができたのであった。

シンプルで艶があり、洗練されたムードを纏う

2023年デビューの三條場夏海が立ち上げたウィメンズウェアブランド。
シンプルなのにどこかに艶があり洗練されたムードを纏う。

着飾るとは、削ぎ落とす事で洗練され自身の肌がジュエリーとなり、エフォートレスで女性らしいスタイルを提案する。
”stage”から派生した意味を持つGajessのブランドテーマは、誰にでもある自分自身のステージを輝かせて欲しいというディレクターの想いが込められた”On Stage”。

曲線のあるフォルムや肌艶を際立たせるカッティングに拘ったプロダクトを代表例に、都会に馴染むヘルシーモダンな洋服で女性の魅力を引き出す。

一見ただの黒いシンプルなキャミソールと思ってしまうかもしれないが、おそらくかなり計算されたキャミソールである。胸元は空きすぎず、生地も薄すぎないので、ボディラインのいい部分だけを拾ってくれる。それゆえに下着感がなく、いやらしすぎない着こなしになる。ラメ糸が織り込まれているが、ギラギラしすぎずギャルみが強い感じではないので、太陽の下で程よくキラキラして、黒だけど夏らしさを演出できる優れものである。露出している素肌も綺麗に見える気がする。
そんなキャミソールを主役にして、デニムと合わせるのはもちろん、敢えてスポーティーなパンツを合わせて少しカジュアルに着るコーディーネートもこの夏よく組んだ。これから肌寒くなってきたら、シャツやジャケットを羽織ってみても素敵だな、とかあれやこれやと妄想している。黒いキャミソール一枚で、こんなに楽しむことができて、こんなに色々と語ることができるとは、自分でも思わなかった。本当に三條場さんには心から感謝を申し上げたい。新しい服も楽しみにしてます。(絶対ご本人読んでない。)
抵抗感のあったキャミソールも、Gajessのおかげで、堂々と楽しむことができた。こうやって好きな服があるだけで、苦手な暑さも、強い太陽の日差しも、ほんの少しだけ楽しくなるから不思議である。家にこもっていないで、外に出てみようかなとか、この服を着て誰に会おうかな、とかそんなことを考えるようになるし、それだけでなんだかワクワクする。ちょっとしたことだけど、やっぱりファッションの力ってすごいな、と思う。「もう若くないし、こんな服着れない」とか「太ったから無理」とか、人の目を気にし過ぎたり、勝手に自分を制限するのは辞めて、今着たい服を楽しんで着よう。初めてのキャミソールをきっかけに、改めて思ったのであった。

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