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神様の出征
父は頻繁に子供の頃の話をするタイプでは無かったけど、時々パンチのあるエピソードを繰り出してきました。
「お父さんが子供の頃、漁師さんは服を着てなかったんだよ」
???
父は昭和6年生まれ。
確かに大昔。
いやいや、いくらなんでも。
大昔で東北の田舎とはいえ、何か着ていたでしょ、と言ったら
「いや、本当に全裸」
知らなかった…私の故郷には昭和になっても裸族がいたらしいです。
しかし、小さい船としても網とか釣り竿とか漁具を使うのだから漁師さんの大切な(もにょもにょ)が危険に晒されるのでは…?とさらに問うと。
「縄」
な、わ?
「漁に出る時は大切な(もにょもにょ)を縄で巻いて、その縄を腰に縛って行く」
…父も子供だったから何かしらの勘違いがあったかも知れません。
でも、どうやら冗談でも嘘でもなく、縄だけを身にまとった漁師さんがいたようです。
すごいぞ、昭和。
戦争の時、神様が出征をした話もありました。
戦争中は人間だけではなく、神様も戦地へ向かったそうです。
私が子供の頃、お祭りで神様が乗っているお神輿が前を通る時には両手を合わせて目を閉じて拝むのがマナーで、2階や3階から見下ろすのもダメ。お神輿を担ぐのは(お清め)をした白装束の男性だけでした。
蛇足ですが生理中は神社へ行くのも禁止。そんな街で育ったので、他の地域のお祭りで女の人が神輿を担いだり、神輿に乗って盛り上げているのをテレビで見た時は、悪夢を見ているのか?と言うほど驚きました。
閑話休題
神様が出征する時、父や地元の子供たちは海まで神様のお見送りに行ったのだそうです。
もちろん、直接見るなんてもってのほか。神主さんの祝詞や一連のセレモニーが終わるまで目を閉じて拝んでいるようにときつく言われて、父は言う通りに。
でも、いるんですね。
ジャイアン的なやんちゃな子供が。
大人の言いつけを破って薄目で見ていた少年、他の子供たちも興味津々です。
「神様見たの?どんなだった?」
「神様の姿はわからなかった。けど…。祝詞の途中で、もの凄い光が水平線に向かって走って行ったのだ」
「おおおおおーっ!!」
今となっては、この少年の言葉通りの光景があったのかどうか知ることはできないし、戦争、出征、と悲しいワードではあります。
でも、昭和の子供たちのピュアな場面が思い浮かんでなんかホッコリとしてしまいます。