ロメールくんは記録係

五年三組のロメールくんは記録係だからずっと窓から見える緑の光線の観察日誌をつけているらしい。僕にはなんにも見えやしない。ただのふつうの校庭があるだけ。
「なにが見えるの？」
ある日聞いてみた。
良いこと教えてあげようか？
ロメールくんはいろいろなことを知っている。うちのクラスのトモコちゃん、二組のサトシくんと最近イイカンジなんだよ。
「え？あのふたりはいつも喧嘩してるじゃない」
ううん。それが一昨日くらいからようすが変わったんだ。多分小屋にいる豚の太郎が関係してるんだ。
そう言って静かに笑うロメールくんの顔はまるで百万年も生きたおじいさんみたいだった。
「それが緑の光線なの？」
いいや違う。その奥にあるのが緑の光線なんだ。「ふたりの奥に？」
そう。ふたりの奥にずっとあるんだ。それを記録するのが僕の役目なんだよ。
そう言ってロメールくんはまた窓の外の観察に戻ってしまった。