雑談15 ため息の人
リディア・ディヴィスが好きだ。ため息の作家という言葉が浮かんだ。長いため息の一筆書き。お調子者だから恥ずかしくなって、最後さみしくなる。寒いから温めようとしてほっとする。はっきりさせようとするから曖昧になるし、生きようとするからたまに死にたくなる。好きだから跳ね除けたくなるし、怖いから近づきたくなる。
狼(ウルフ)みたいに気高くなれないし、兎姫のように可愛らしくもなれない。その代わり小さなメモいっぱいに書き込んで溜め込む溜め込む。さながら非常食をほっぺたに詰め込むリスだ。机に向かって書く。あったかいお茶ばかり飲んでしまうのは安心するからだろう。食欲に由来しない栄養補給は正しく胃で消化されるのか。
いますごくあの人が優しく感じる。神経質で、正直で、頭の良い野心家の人。みんなが忘れている細かいところがどうしても気になってしまう人。ストレスでお腹が痛くなってもまだ考えてしまう人。真面目だけど、不器用になり切れるほど嘘が上手くない人。